棺の上のベリーに、ガンガーの魚を思う

さて相変わらずドタバタとしながらロンドンに戻りました。

変わったこと……、うーん、わたしが来るなり冷夏だったロンドンが
急に暑くなったことでしょうか。涼しいと期待してきたのに、
東京に引き続いてまたまた汗かきかきの日々です。
ま、東京の酷暑に比べると、いくら陽射しが強いとは言っても知れてますが。
(とか言ってたら、せっかくレーザー治療してポロリと剥がれたシミが
即効で濃くなってきた! ガッデム! 高かったのにーーーーー!)

ところで、一時帰国中にOくんという人に会いました。
密かに「Cool!」と思っているんですけど(読んでる~?)、
渡英の数日前に会ったとき、彼が「昨日、某海沿いの街に行ってきた。
ウニ拾って海岸で食べた」という話をしていて、わたしは
「なんで誘ってくれなかったの!!!!!」と理由なく憤慨していたのでした。

その後、わたしの頭はずっと「ウニ、ウニ、ウニ」で占拠されていて、
けっこうずっと「わたしも行きたかったのに」とOくんを恨んでいた。
もちろん、彼にはなんの咎もないのだが……。

でねでね、渡英後の日曜日ね、うちの先生と近くの霊園に行ったのね。
墓場でデートって、日本的に考えるとどうかと思うのだけど、
まあそこはロンドン。ステキなデザインの墓石が並ぶ、ちょっとした
公園みたいな場所で、本とかおやつとか持って天気のいい日によく行くのだ。

この日も散歩がてら、読みたかった本などを小脇に抱えて出かけたの。
と、目に入るは、ブラックベリーの茂みがあちらこちらに!

↓こうゆうのです↓
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日本でベリー類ってあまり馴染みがないというか、おしゃれ系のスーパーで
いい値で売っている高級果物、という感じがするのだけど、
そうだ、イギリスでは堂々とそこらへんに自生しているのだった!

それを知ったのは、もうずいぶん昔のことのような気がうする。
当時、夫(になるはずだった)人のお母さんが住むロンドン郊外の丘に
連れていかれたときだ。高速道路のすぐそばにある鬱蒼とした森の中を
たっぷり1時間、藪をかきわけ歩いて登った先に、秘密の場所があった。
彼と母親が、20年近く前から誰にも教えずに、毎年夏になると
ブラックベリーをつみにきた場所だった。

下界でもあちこちに生えていて、形状さえ知っていればすぐに
目につく茂みなのだけど、それだけに、季節になるとタッパーを
抱えた老若男女が真剣な表情で住宅街の茂みに身をかがめて収穫
したりしている。銀杏拾いにちょっと似た風情があるかも。

この内緒の場所では、ベリーたちは犬のおしっこにも車の排気ガスにも
汚染されておらず、おまけに誰も取りに来ないから、いつ行っても
プリプリしたうまそうな実がいくらでも生っていた。
軍手と運動靴と長袖シャツで完全武装して、収穫してるんだか
つまみ食いしてるんだか分からんようなベリー狩りを楽しんだものだ。

その人とはすでに縁がなくなってしまったので、あの丘には今年は
行けないなあ、残念だなあ、と諦めていた。
マジで山奥の秘境にあったから、ひとりじゃ絶対に辿り着けないのだ。
つみたてのブラックベリーをてんこ盛りに入れて
つくるパイは、鮮やかな紫色が贅沢で、本当にうまかった。

だから今年、ロンドンの短い夏の終わりに酷暑の東京から滑り込んで、
思いがけずあのブラックベリーを発見したわたしは、興奮したね。
手元にあったスーパーの袋にありったけ詰め込んだ。

ブラックベリーの枝には細かいトゲがいっぱいあって、ちょっと気を緩めると
手が傷だらけになる。墓場デートのつもりで、装備なんかしてなかったわたし、
案の定、思い切り傷だらけだった。うちの先生はなんでわたしがそこまで
ベリーにこだわるのかイマイチ理解できないらしく、なかば呆れ顔で、
本なんか読んでる。

お金出して買わないといけないものを自力で収穫するってとこに、
燃えるわけですよ、都会っ子のわたしは。
とりあえず、Oくんがウニとりに連れて行ってくれなかった恨みは
これでなんとなく晴らされた気がする。ウニのほうが高そうだけど。

ところで、ベリーの茂みは、思い切りヒトサマの墓石の上にあった。
これってちょっと、ガンジス河でとれた魚みたいな感じだよな、なんて思った。

ご存知、バナーラスでは、荼毘に付した遺灰を流したすぐそこで、
洗濯したり、釣りをしたりしている。火葬にせず、水葬にされる遺体も多い。
だから、さまざまな有機物を食べて育ったのであろう、
よく太った魚がバナーラスの市場で売られているのを見るたび、
「あれだけはよう食わん」と思っていた。

が、ある時、アキオくんの知り合いのインド人のお母さんが料理してくれた
ガンガー魚カレーを目の前にしたらあまりにうまそうで、ついつい手を出し、
予想に違わず極上の味に痺れて、アキオくんと奪い合って完食してしまった。

だから棺の上のブラックベリーなんて、どうってことないのだ。
しこたま収穫してきたベリーは、お砂糖とライムと生姜で煮て、ジャムにした。
オーブンがあったらパイを焼いたんだけどな。

夏の終わりの、そろそろ秋支度の茂みからは、小ぶりの痩せた実しかとれなかった。

あの秘密の丘の、丸々と立派なベリーとは雲泥の差だ。
それでも、間に合ってよかった、と思う。
忘れてた夏休みの宿題をひとつクリアした、みたいな気分だった。

このベリージャム、生姜汁を入れるのはわたし的なイギリス風アレンジだ。
甘酸っぱい中にピリリと効いていて、まるきり、ベリーの思い出そのものの味。

……つうのは、やっぱ、ちょっとデキスギっすかねー。あはは。
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by masala_days | 2005-09-09 07:23 | 旅なんちゃって


20代の暗黒時代をインドとイギリスその他あちこち季節移動し続け、30代、やっと日本国で社会復帰。8か月の産育休を経て、現在、働くかあちゃん。オットの不在中に衝動買いしたマンションの借金返済に勤しむ


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