Guy Fawkes & Diwali

c0036998_4301591.jpg[A Beautiful Autumn Day]


400年前、フォークスさんというカトリック教徒が、カトリックへの抑圧に不満を持ち、国会議事堂を爆破しようと英国至上最大の謀反を企てたものの、密告により頓挫いたしましたとさ。フォークスさんら一味は捕らえられ、街中引き回されたのち、八つ裂きにされたそうな。

「英国が乗り越えた最大の危機」というような愛国心丸出しの見出しで、毎年11月5日は「ガイ・フォークスをやっつけた記念日」になっている。で、サマータイムが終わった途端にめっきり暗くなった夕方頃から各地で花火があがる。


日本では夏の風物詩である花火は、イギリスでは秋の風物詩なのだそうだ。
ロンドン各地でも大規模な花火大会が開催され、それ以外にも、近所のあちこちで
花火を打ち上げることになっている日らしい。まあ、うるさいんだこれが。

去年の私は引きこもっていたのでこれがイギリス由来の祭りとは知らず、
ちょうど同じ時期に祝われるヒンドゥー教3大祭りの「ディワーリ」だと思い込み、
「やっぱりロンドンはインド人が多いんだなあ。頑張ってるなあ」と、かなり
トンデモナイ勘違いをしていた。

ディワーリはヒンドゥー歴の正月にあたる。日が暮れると爆竹や花火がガンガンあがり、
朝までうるさいこと、うるさいこと。本来はバターランプを飾ったり、掃除をしたりして
富の女神ラクシュミーを招きいれる祭りなのに、どうもインド人は祭りに命をかけている
というか、まさにこの日のために一年間耐えたんだぜ燃えるぜ俺は、というフシが
あって、その盛り上がりは半端ではない(3月頃、これもまた狂気の沙汰となる
ホーリーという祭りもある)。

バナーラスと、インド北部のシムラーというイギリス植民地時代の夏の
避暑地だった街で、私はこのディワーリを迎えたことがある。

シムラーは標高の高い山間にある。
コロニアル調の建物が山間いに張り付くようにして建っていて、
あまりインドっぽくないが情緒のある街だ。

2001年11月、シムラーは雪でも降りだすんじゃないかという寒さだった。
いろいろと勝手な事情から、心身ともに少々辛い旅の途中で(とか書くとかっこいいな)、
何千何万という無数のバターランプのほんのりした灯りにぼんやりと浮かび上がる街が
なんだか浮世離れして目に移ったものだ。

宿の隣の部屋のオーストラリア人が実にピースフルな好青年で、
ピースフルゆえにとある乾燥植物を所持していて、高台の宿のテラスから街の灯りを
眺めていた私に白い息を吐きながら「どーお?」などと誘うので、
ついご相伴にあずかってしまったりもし、よけいに刹那的な、危うい魅力のある街に思えた。
寝袋を持っていなかった私は眠れずにブルブル震えながら夜半まで花火の音を聞いた。

翌日からもずんずん北上を続けて、崩れそうな山道をよろよろのローカルバスを乗り継ぎ、
キナール地方というところにあるレコンピオという街を目指した。

レコンピオからキナール・カイラス山をどうしても見たかった。
チベットにある聖なるカイラース山に似ているそうで、くそ寒いチベットを逃れて
シヴァ神が冬の間滞在するという、ひじょうに嘘臭いながらも妙に惹かれる逸話の
ある山だった。

悪路をおんぼろバスに揺られてやっとたどり着いたレコンピオから見るその山は、
真っ白い雪に覆われて朝に夕に色を変え、それはそれは神々しかった。
旅の道連れに、触ると百万本の針が一気に飛び出てきそうな、あるいは
粉々に自己分解してしまいそうな、なんでそんなものをムリヤリ引っ張り出してきたのか、
どれだけ足掻いても私の能力では扱いきれないのに、なんでそんなものに執着するのか
自分でもよくわからない危険物を持っていて、でもその危険物が一瞬針を引っ込めて
眠りについているのを自分勝手にホッと一息ついて眺め、
なにはともなく山に感謝したものだ。

人は、他人にとってはどうでもいい衝動に突き動かされてバカな旅をするものだ。
ほんとにさ。

翌年のディワーリはバナーラスにいた。
銃撃戦でも始まったかと思われる、すさまじい音と煙の一夜だった。
屋上から街を見ていると、あああそこは金持ちだからでかい花火があがるなとか、
あの辺はビンボーだから爆竹だけだなとか、面白いように分かってなかなか楽しかった。

そんなこんなの、ちっぽけな思い出のあるディワーリである。
ガイ・フォークスの花火はディワーリほど勢いがなくて、
一発一発がなんだか気が抜けたような間隔であがり、飽くことのないエネルギーで
繰り広げられるインドの花火と爆竹の夜を知っている身には少々間が抜けている。

遠く大英帝国までやってきて、ふと数年前の苦くて甘くて酸っぱい記憶を反芻した
ガイ・フォークスの夜でありました。

時間は勝手にどんどん流れていく。
毒薬すらも、いつか記憶の果て、一抹の苦味を残して暖かくまあるい味に変える。
幸せであるように、時々ね、遠くから祈っていますよ。
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by masala_days | 2005-11-08 05:24 | インド話


20代の暗黒時代をインドとイギリスその他あちこち季節移動し続け、30代、やっと日本国で社会復帰。8か月の産育休を経て、現在、働くかあちゃん。オットの不在中に衝動買いしたマンションの借金返済に勤しむ


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