謎の豆 & 引越し貧乏

1等をとりそびれたボンベイからアウランガバードへ向かう2等椅子席は
いつもながら、ぎゅうぎゅう詰めの苦行のような7時間でした。

押し合いへし合い、隙間に座ってこようとする人々との功勢に疲れ、
かなり険悪ムード漂う車内だったわけですが、チャイ売り始め数々の売り子が
行き来する中、気づいたらかなり多くの周囲の人々が手にしている植物がありました。

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ぷちかりペっ。
ぷちかりぺっ。

中国におけるヒマワリの種のように、
森におけるリスのように、
人々はただひたすら無言でこの植物の実を口で噛み切っては
ぺっ、
と皮を吐き出すのです。

ええ、もちろん、床にですが。

足元はたちまち、ぺっぺっぺと吐き出された緑の皮だらけになり、
ついでに座席の下に入れた私の荷物なども皮にまみれ、
ついでに吐き出された噛み煙草の赤い汁なども散乱し、
われわれ一行の疲労はやがて確固たる怒りへと変わっていくのでした。

しかし、エンドレスに、そして無心に、ぺっぺとやる人々を見るにつけ浮かぶ疑問。

あの植物はなんだ?

向かいの婆さんとは言い合いばかりで完全に険悪ムードだったので、
聞くに聞けません。

が、気になる。

アウランガーバードについて、両替所で、そこにいたシーク教徒のお兄ちゃんに、
「あのさー、枝みたいな緑の植物でさー、豆みたいなのがついてて……」
と説明すること数分、ようやく分かってもらえ、名前を教えてもらいました。

「はりやーらぶーと」

というものでした。おまけにお兄ちゃん、
「おい、ちょっと買ってこいよ」
と小間使いの少年にひとっ走り行かせ、現物を入手してくれました。

c0036998_7303860.jpg

「こうやって食べるんだよ」
と実演してくれたのを見ると、エラそうなシークのお兄ちゃんですら、
あの列車の婆さんらと同じ食べ方、すなわち、

ぷちかりペっ。

とやってました。
ええ、もちろん、床にですが。

で、ひと段落つくと、枝ごと手に持って、
ザッザッザってな感じで床を掃くとこまで列車内の人々とまるきり同じです。
土間が主流の農村暮らしならいいのでしょうが、大理石を敷き詰めた
両替所でそんなことをしていいのだろうかと一瞬思いました。

さてせっかく買ってきてくれたのですから、試食しないわけにはいきません。
で、皮を剥いてみて、わたしゃー驚きましたね。

c0036998_7332137.jpg

「あああああ! チャナ・ダルじゃん!」
という私の声に、お兄ちゃん、いかにも当然だといわんばかり、
「そうだ、生チャナだ!」

つまり、ひよこ豆とかガルバンゾーとか呼ばれている、あのチャナ豆だったわけです。
フモスの元ですわよ、みなさん!
しかし、カチカチに乾燥して、圧力鍋でしか料理できないあのひよこ豆かよ?!
意外や意外。まさかこんなところで出会おうとは。

ぷち柔らかプチっという感じの食感、生グリンピースを彷彿させるものがあって、
わたしはけっこう好きでした。食べ過ぎると確実に腹を壊しそうですが。

しかし、アウランガーバード滞在中、道を歩けばこの植物の枝がいたるところに
無造作に捨ててあるのを目撃しました。
約10メートルおきくらいに落ちてたんじゃないですかねー。
あの辺の特産なのかしらん。ちなみにひと束1ルピーでした。

けっこくしつこく食べ続けましたが、いつまで経っても「ぷちかりぺっ」と口で噛み切る
→実だけ食う→皮を吐き出す、という手順ができず、いちいち指で剥いては食べる
まどろっこしさに負け、最後は捨てました。
ごめん、シークの兄ちゃん。

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さて、古巣(?)の北西倫敦ゾーン2に引越して一週間が経ちました。
つうか私、引越ししすぎです(苦笑)。

移動のたびに、スパイス臼だとか鍋だとかお気に入りの食器だとか、
箱一杯のスパイス各種だとか、いらんもん、もとい、私にとっては
大切なのだが流浪の民としては持っていてはいけないものが
山のようにあり、パッキング及び運搬にいつもいつも苦労しますです。

インドもタイも不必要に広い部屋に住み、ロンドンに来てからも
広めの部屋を借りてきたわけですが、ふと気づけば、私が9割方過ごすのは
ベッドの上か机の前。他のスペースはまるきり無駄です。

部屋が広いからモノが増えるのだ! と、
今回は思い切ってうんと狭い部屋を選んでみました。
それでもまあ、日本式に考えると6畳くらいはあるかしらん。
いろいろ頭を使ってうまい収納を編み出してきた今日この頃なのですが、
なんと。

入居時から生ぬるくて調子悪そうだったセントラルヒーティングが、
引越し3日目に完全に壊れ。
その翌日に電気系統がいっさいがっさいイカれ。

まだまだ片付いていない室内を残したまま、

いきなり、

ロウソク生活3日間でした。

もちろん風呂にも入れません。
オール電化キッチンなのでお湯もわかせず料理もできません。
いっぱいいっぱい宿題あるのにラップトップも使えません。
携帯すら充電できません。
零度に近い外気と限りなく同じレベルの室内です。

ここはインドか。

……とつぶやき続けた3日間でした。

落ち着いて快適に過ごせる巣になかなか恵まれず、
家運のない人生だなあと嘆いていますです。
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by masala_days | 2006-02-04 07:44 | イギリス話


20代の暗黒時代をインドとイギリスその他あちこち季節移動し続け、30代、やっと日本国で社会復帰。8か月の産育休を経て、現在、働くかあちゃん。オットの不在中に衝動買いしたマンションの借金返済に勤しむ


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