人種差別というやつは。

「どの面下げて」とはこのことでしょうね。
……などと思いながら毎日うちの先生の授業に出ている(ヤな生徒だ)。

相変わらず冴えない感じで、3日続けて同じパンツを履いてきたりし、でも心なしか張り切り具合が、唾の飛ばし具合が違い、目に輝きみたいなものがちらつくのが実に実に憎らしい。
相手の女の子にもなぜかよく会う。
先生の汗っかきな小太り具合と彼女の貧弱な体格を見るにつれ、思わず淫らな想像力をかきたてられてしまい、あんなことやこんなこと、そーんなことまで……、と気が散ることこの上なく、ひじょうに困っている。

とここで唐突に話は変わる。

東京で普通に生活していてあからさまに人種差別のようなものを肌で感じることはあまりないような気がする(あるのかもしれないが少なくとも私の日常生活範囲では顕著でなかった)。でも、日本以外の国で日本人として生活すると、大なり小なり様々な形で生活の中に「人種差別」というものが存在することが分かる。

イギリスに来てからも色々あった。
ヒースロー空港のイミグレーションで役人にいじわるされたとか、バスの運転手さんにネチネチ文句を言われたとか、満員のバスで白人の子供たちに「色つきは降りろ」と大合唱されたとか、月々いくら出すから妾にならないかと行きずりのオヤジに持ちかけられたとか、言い出せばキリがない。

でも、それらはたいてい「ああ中国人と間違われたのね」とか、「教養のない下品な奴らめ」などと内心悪態をついて終わり、なんとなく日本人としての自分のこととして差し迫ってこないので、結局のところ、こちらは大して傷つかない。もっとひどいことされてる人たちをいっぱい見てきたというのもあるし、なんというかやっぱり日本人の驕りなんだろうか、おめでたいと言うべきなんだろう、「存在」は認識しても、いまいち自分に降りかかってこない気がするのだ。

おまけに、私の場合「された」と感じたことはあっても、自分が「した」とはっきり思ったことはこれまで一度もなかった。

うちの先生は姓からはっきり分かるユダヤ系移民で、彼女の方は国際的に国とは認められていない、とある小さな島の出身である。最初にこの組み合わせを知った時、まず一番に出てきた感想が「ああ彼女はパスポートが欲しいのね。英国籍なら誰でもいいわけね。先生も白人よりはオリエンタルの方が都合がいいわけね。両者の利害が一致したわけだわ」というものだった。
次の瞬間、そういう感想を持ったことに、我ながら驚いた。ショックだった。

これが俗に言うところの「人種差別」というものじゃなかろうか。
と、気付いたからである。
私の感想が万に一つの可能性で真実だったとしても、誰が誰と付き合おうが、そんなことは他人が口を挟むことではなく、私なんてお呼びじゃない。だいたい、楽しい楽しい蜜月を迎えている彼らにとって、他人のくだらん邪推なんぞはまったく何の影響もないのである(……と書いているうちに何だかまた腹が立ってきたなーもう(私も相当しつこい))。

では一体、何が私に差別意識を持たせたのか。
うーん、分からん。

彼女の方に関しては、たぶん、それなりに理由がある。
たとえば、トイレですれ違ったとき、トイレットペーパーをちぎって顔の脂を押さえていたとか、着ている服がいかにもスーパーの特売品です、みたいな安物でみすぼらしいとか、いつも上目使いで首を少しかしげて人と話すとか、身体が妙に細くて姿勢が悪いとか、そんなことだ。要するに貧乏臭い。こざっぱりした気持ちのよい清貧とは違って、いかにも他人に訴えるところのある、小賢しい貧乏臭さが私はとても嫌いなのらしい。

でもこれらと人種とはあまり関係ない。どちらかというと、単に個人的に嫌いだというだけだ。でも、あの感想を持った時、私はこれこそが「人種差別をする」という行為なのだ、と確信したんだよな。個人的嫌悪感にうちの先生への恋心が絡んで、そこへたまたま人種とか国籍が乗っかってきたってことだろうか。ああますます分からん。

などと思いながら数日を過ごし、今朝、鏡を見たら、左の口元にくっきりとシワができている。
小ジワなんてものじゃない。くっきり。
いかん。これはいかん。一応、私は年齢よりは若く見えるらしいのだが、このシワはいかん。
醜い考えを起こしていると、顔まで醜くなってくるのだ。
早急に心清らかに気高く生きるよう努力しなければ。

というわけで。
差別はいけません、といくら言ったところで、つまるところ、自分でされたりしたりしてみないと、それがどんなものかなんて糸口すら一生分かるはずがないのだなあ、としみじみ思ったのでありました。
それに、自分があの汗っかきの先生とあんなことやこんなことをして絡み合っているところはどう頑張ってみても想像できないので、やっぱり私の恋心はマヤカシだったみたい。

しかしシワは怖い。一難去ってまた一難。
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by masala_days | 2005-02-10 20:56 | イギリス話


20代の暗黒時代をインドとイギリスその他あちこち季節移動し続け、30代、やっと日本国で社会復帰。8か月の産育休を経て、現在、働くかあちゃん。オットの不在中に衝動買いしたマンションの借金返済に勤しむ


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