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これは愛なのだろうか

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[Sunday Lunch]
Red Kidney Beans in Tomato Sauce, North Indian Style
ラジュマ・ダルの北インド風トマト煮込み

昨日のメニュー、同居人にいまいち不評だったものが一品だけある。さつまいものコザンブだ。これはまたまた渡辺玲さんの「カレーな薬膳」にあったレシピで、「甘酸っぱくて日本の煮物を彷彿とさせる」ちょっと変わったカレーだ。私にはもうドンピシャのうまさであった。が、同居人は料理が甘いのがどうもダメだと言う。そんなことを言っても、彼がこよなく愛する缶詰のベイクド・ビーンズは、トマトソースをベースにした、れっきとした砂糖煮込みだ。缶にちゃんとそう書いてあるもんね。味覚なんていい加減なものだ。

同居人は幼少のみぎりからほとんど加工食品だけで育ってきた。彼のお母さんがまったく料理というものをしない人だからだ。
「うちの息子のガールフレンドったら、日本人なんだけど、今日もまた1時間も料理してたのよ!」
「レンジで3分間チンするのと、3時間かけて料理するのと、味なんて大して変わらないわよ」
とまあ、これまでにもいろいろと問題発言をかましてくれた。別にこれは彼女に限ったことではない。実に典型的なイギリス婦人であるというだけのことだ。

昨日、私はこの同居人母が訪問中に土曜恒例ディナーの準備をしていた。
「ねえねえ、それ、面倒臭くない?」
「本格的よねー。インド料理屋さんの匂いがするわー」
なんやかやと台所を覗きにくる。彼女は料理はしないが掃除マニアで、久しぶりに来た娘の家(われわれは同居人姉の家に家賃を払って居候しているのだ)を徹底的に磨き上げていたのだが、それもすっかり済んでしまい、同居人が帰宅するまで暇をもてあましていたらしい。いかにも手持ち無沙汰にしているので、グリーンピースの皮むきなどなど、こまごまとしたことを彼女にお願いした。

「どうです、今日は一緒にごはんを食べていきませんか」
水を向けると、少しの間考え込んでいた。彼女が日々愛好する冷凍食品にはかなりの数のインド風メニューが含まれているので、決して嫌いな味ではないはずだった。
結局、彼女は時間が遅いことを理由に帰宅してしまった。「そのうち必ず心を決めて来るわ」と妙ちくりんな約束を残して。

帰宅した同居人に「今日はマーガレットが料理を手伝ってくれたのよ」と言うと、彼は瞬時に血相を変え、「えええええっ!」と隣近所に響き渡るような音量で叫んだ。それは愛する母に料理を手伝わせた鬼嫁に対する非難の叫びではなく、「うちのママがつくった料理は食えたもんじゃないんだぜ」と焦った息子の悲痛な叫びであった。

ところで、彼はドッグフードのような純英国風加工食品をこよなく愛している。数ヶ月前に同居し始めてから、私の手料理は実に何回も缶詰のベイクド・ビーンズに負けるという憂き目にあってきたものだ(せっかく食事を用意しても、「僕いらない」とさっさと缶詰を開けてしまう……)。
ところが近頃の彼は、私のしぶとい味覚教育のおかげで「手料理の味」というものを覚えつつある。柔よく剛を制す、である。

それはいいのだが、今度はさりげない要求が頻発するようになってきた。今日も一日家にいた私に向かって、「ねえねえ、豆のカレーっておいしいよねー」、「こないだ買ってたスコーン・ミックス、いつつくるの?」とじわりじわり攻めてくる。

そうだ、最近われわれはスコーンに凝っている。あの英国式ティーの時に必ず供される、「外はさくさく、中はもちもち」した、ビスケットとパンのあいのこみたいなお菓子(?)のことだ。あっちこっちのベイカリーで買ってきては品評している。同居人なんてわざわざ1時間もかけてセンターにおもむき、ハロッズのフードコートで買ってきたくらい、はまっている。

ハロッズのスコーンはそこそこうまかった。でも「焼きたてはもっとうまいはず」と、先日、買出しの時に半ば強制的にスコーン・ミックスを買わされたのだった。

初めてつくるスコーンは、恐れていた通り、うまく膨らまなかった。
でもさくさくした食感は確かに今までで一番、うまかった。
「もっとさあ、こねないでさっと混ぜるとうまくいくんじゃない」
ソファーに寝そべりながら同居人は言った。それならアンタがつくらんかい。

ええ、わたしゃー素直につくりましたよ、豆のカレーもスコーンも。
これは愛なのだろうか。なんだか納得がいかない。

「そうだ、今度つくる時はレーズン入れてよね」
味覚教育の効果が出始めたと他愛なく喜んでいる私の影で、どうも彼が「しめしめ」とほくそ笑んでいる気がしてならない。
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by masala_days | 2005-02-28 06:58 | イギリス話

Saturday Special

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[MENU OF THE DAY]
*from the left top*
Aubergine in Coconut Masala / Sweet Potato Kozambu(Andra Pradesh Style Sweet&Sour Curry) / Aaloo Matar with Paneer(Indian Cheese) / Plain Dal / Yogurt Stew(Tomato Raita) / Ghee Rice(Aromatic Butter Rice)

左から、茄子のココナッツ・マサラ、さつまいものコザンブ(アンドラ・プラデーシュ州風の甘酸っぱいカレー)、ジャガイモとグリーンピースとパニール(インドのチーズ)のドライカレー、プレーン・ダル、ヨーグルトシチュー(トマトのライタ)、ギーライス(精製バター風味のごはん)
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さて土曜恒例のインド料理ディナーである。先週はインフルエンザで休んでしまったので、それを取り戻すかの勢いで今日は6品もつくってしまった。

ところで、どうして人はグリーンピースの皮を剥く時、みんな同じ行動をとるんでしょうね。

「暇だから手伝うわ」
同居人母はそう言って、テーブルの上に山と積まれたグリーンピースを手にとった。それは大変ありがたいのだが、剥いていくそばから中身の半分は彼女の口に入っていく。気持ちは分かる。なんたって生のグリーンピースは甘くて柔らかくておいしいのだ。ちょっとしたスナック菓子なんか目じゃないおいしさですいすい手が伸びてしまう。

日本ではグリーンピースなんて料理の添え物でしかなかった。それもどちらかというと大しておいしくない、嫌いではないが好きでもない野菜の代表格だった。だいたいが冷凍や缶詰ものだったので、本来の味を知らなかったのだ。

その旨さに目覚めたのはインド滞在時のことである。冬になるとどこの露店の八百屋も旬真っ盛りのグリーンピースを積み上げて売っていた。インド料理では堂々と主役を張れる野菜で、グリーンピースを主要にしたカレーがあちこちで見かけられた。

最初、鞘に収まっている姿からはそれがグリーンピースとは予想できなかった。八百屋に居合わせた買い物客のインド人男性がその鞘を手にとっておもむろに中身を出して味見をするのを見て「え、これグリーンピースなの?」と気づいたのだった。彼を見習ってその場でつまみ食いして以来、私はグリーンピース愛好者になり、冬の間中食べ続けた。

さて今晩はグリーンピースのカレーにしよう、と思うとなぜかいつも近所に住むアキオくんという日本人が訪ねてきて、
「あ、マタール(グリーンピースのヒンディー語名)」
とめざとく気づき、人が皮を剥くそばからパカパカ食べていくのである。
「いつまで経っても料理できないじゃないよ」
文句を言うとやっと手伝ってくれる。そういう私も小腹が空くものだからついつい手が伸びてしまって、結局、カレーになる頃には最初の量の半分くらいになっているのが常だった。

そんなグリーンピースを今日は近所のインド食材店で見つけた。抗えるはずがない。どっさり仕入れてきて(それはインドよりも10倍くらい高かった)、下準備を始めたら、同居人母に横取りされたのである。マーガレットよ、あなたもか。

「私が小さい頃はねえ、冷凍食品なんかなかったから、お母さんを手伝ってよくグリーンピースの皮むきをしたものよ」

料理と言えば「ジャガイモを茹でる」くらいしかしない同居人母にも、せっせとママの料理の手伝いをした少女時代があったらしい。いい話だ。いい話だが、あんまり食べないでくれようぅぅ。
「そんな何時間もかけて料理するなんて、あなたも物好きよねー」
そう言い放ちながら、彼女は私の大事なグリーンピースを食べ続けた。くう。

そうそう、今日は朝から配管屋さんが来るというので、言葉の怪しい私に代わって同居人母が助っ人に来てくれたのだった。私はこの配管屋さんがとても苦手なのである。ものすごい早口の超ロンドン下町訛りでまくしたてるので、何を言ってるか全然分からないからだ。

どんな言語でもそうだ、庶民が普通に話す言葉と、教室で教科書から学ぶ言葉の間には厚い厚い壁があるもの。特に私は今回の渡英では当初からずっと、語学学校の先生たちの「教育を受けたきちんとした」アクセントというものにどっぷり甘やかされてきたから、その辺のお兄ちゃんおじちゃんたちが話す言葉がほんとうに分からなくて困る。

南インドで同居人に初めて会った時、彼もこのバリバリのロンドン若者訛りで話していて、私はよくポカンと口を開けたまま、「この人は一体何語を話しているんだろう」と考え込んだものだ。彼も現在はだいぶ意識しているらしく、それなりに分かる言葉を話してくれるようになったのだが……。

どのみち私は、どう頑張ってみても正統派の教科書イギリス英語の発音を極められはしない。それでも元気な時はなるべく正統派を意識するようにしているが、疲れてくるともうダメである。せめて分かりやすいアクセントで話すように心がけようっと。
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by masala_days | 2005-02-27 05:37 | イギリス話

午後の飲茶

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[picture; Rickshawman's Break / Old Delhi India, 2001]

ここ数日ロンドンは雪が降り続いていて、まさに冬真っ盛りという感じ。でも日は確実に長くなっている。ひと頃は午後4時でもう真っ暗だったというのに、最近は6時近くまで明るい。私は実になんというか堪え性がなく、暑いのも寒いのも両方とも苦手なグウタラである。でも、どちらかを選べと言われたら暑いほうを選ぶだろうなあ。全般に、暑いところの方が食べ物に苦労しない感じがするからね。

わが愛しの先生がまだインフルエンザで休みなので、学校に行く気がまるきり失せる。認めるのもシャクだが、どうも私は先生がけっこう好きらしい。……というわけで本日ぶっちぎりで授業をサボり、学校近くの中国料理レストランにて飲茶を楽しんだ。

友人Tさんが探し出して来たレストランである。
われわれの常識のひとつに、「イギリスの外食にあまり期待してはいけない」というものがある。どんなに店構えがよくても、そこそこの値段設定でも、それに見合った内容であることは、言いたかないがほんとう~に稀だからだ。

ロンドン中心地にソーホーと呼ばれるとても有名な中華街がある。
いちおうここのレストラン群はそれなりの味をキープしているらしい。が、超がつく高級店ならともかく、手頃な店でほんとうの「うまい中華」にありつけることはほとんどない。特にバンコクや香港で安くて途方もなくうまい中国料理を食べつけている身には(そんな威張るほどでもないか)、お話にならないレベルである。けっこう色々試してみたが、どこもイマイチなわりに高く、どうも納得のいかない顔で店を出ることになる(日本のラーメン屋に毛が生えた程度の品揃えと味で5千円くらいとられる)。

だから今日の飲茶も半信半疑だった。
しかし、結果は「当たりっ!」である。

がぶがぶお茶を飲みながららちもない話で盛り上がり、ぷりっぷりの海老餃子やら小龍包やらを堪能した。こんな幸せがイギリスにあったとは、今まで実に惜しいことをしていたものだ。全体的に食の水準が低いだけに、うまいものを見つけたときの嬉しさはひとしおである。

ロンドンで初めての「私の店」入り。めでたい。
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by masala_days | 2005-02-26 04:48 | イギリス話

スピッツの新アルバムでホクホク、のはずなのに。

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[picture; Doze in the shade / Pataya Thailand, 2004

近頃みょうな具合で身辺でものが壊れる。

手始めはデジカメだ。まだ買って一年も経っていないというのに、数週間前から変な斜めの線が画面に入るようになった。埃だろうか、と思いながらも、乱雑に扱った覚えはない。料理の写真はデジカメで撮っているのでとても不便だ。今はしかたないのでいちいち画像ソフトで目立たないように処理しているのだが。

数日前、台所でガス台の上にあるガラスのカバーを壊した。これは完全に私の不注意だったが、それにしても完膚なきまでに粉々に砕け、台所中ガラスの破片だらけになって往生した。

そして今日はミニディスクが壊れた。突然、録音がぜんぜんできなくなった。せっかくスピッツの新アルバムが届いたというのに、録音できなかったらろくに聞けないじゃないか。ああもう困るよなあ。私からスピッツを取り上げようなんて百万年早いよ。

こんな調子でどんどんものが壊れるのは生まれて初めての経験である。だいたい私は物持ちがよく、次々新モデルが登場するような機械ものでも、いつまでも同じものを使い続ける傾向にあるというのに、最近買ったものはどうしてこう、すぐ壊れるのだ。おかしい。絶対におかしい。

もしかしたら、私の身に降りかかりそうな厄を肩代わりしてくれているんだろうか。
そうでも思わないと、ちょっと不可解である。それならそうで、怪我も事故も病気もしないで済むようにお願いします。

ところで今回スピッツの新アルバムを購入するために初めてアマゾン・ドット・コムを利用してみた。

ほんとうは、私はこの手のオンラインショッピングが大嫌いだ。本でもレコードでも、お店に行って、ぶらぶら歩きながら手に取ってパラパラめくったり視聴したりして、自分のために電波を発しているものを発掘するのが楽しいのだ。そこで思わぬ拾い物をして、自分だけがみつけた(わけはないが)と悦に入るのが醍醐味なのだ。カタログで商品の写真を眺めてものを買うなんて、わざわざその楽しみを半減させるようなことがなぜにこんなに大流行するのか分からん。そんなの、売る側、広告する側に都合がいいだけじゃないか。

とはいえ、現在私はしがない国外在住の身。ええええ、アマゾンはえらいですよ。月曜に注文して、時差があるとはいえ、日本からの商品が水曜には届いてましたよ。DHLもえらいよ。レコード本体よりも高い料金とるだけあって、ほんとうにきっちり届けてくれましたよ。ぼんくら揃いのイギリスRoyal Mailにはないサービスで、かなり画期的と認めざるを得ないよ。ちっ。
だけどやっぱり私は本屋とレコード屋が好きなんだっ!

特にこれといって音楽好きというわけでもない私も、スピッツだけは別だ。好きという割には発売日を忘れていたりして、友人に言われて気がつくあたり、ツメが甘いのだが。とりあえずアルバムは全部持っているし、毎日ものすごいヘビー・ローテーションで聴いている。うちの同居人はほとんどLed Zeppelinだけで生きているので、我が家でかかる音楽はかなり偏っているというか、すごいな、スピッツとLed Zeppelinの組み合わせって(笑)。

同居人がたまたまLed ZeppelinのDVDを見ていたので横から眺める。まああれだね、スピッツは私にとっては神様みたいな存在だけども、ライブでのパフォーマンスはやっぱり日本人的だ。それはそれで私はヨダレが出るほど好きだが、冷静に見ればLed Zeppelinにはやっぱり負ける(とか言うとLed Zeppelinとスピッツを比べるなとかその筋の方々に怒られそうだ)。

ところでRobert Plant、あれだけ外しそうで外さないボーカルも珍しいんじゃないだろうか。決してうまい歌い手だとは思わないけれど、耳を傾けざるを得ない強烈な磁場を持っている。ライブDVDの映像も、20年前とかにつくられたとは思えないほどかっこいい。ステージで着ている服も素晴らしい。セクシーだよなあ。堪能してふと横を見ると、同居人が読んでいた本に歳をとったRobert PlantとJimmy Pageの写真が出ていた。

あああああああ。
Robert Plant、なぜにあなたはそうなるんだ。
全盛期のあの色気、あの肉体的魅力が強烈すぎるのがいけないのだと、頭では分かる。
しかしいかん。そういう老け方をしてはいかん。
Jimmy Pageの方はまだ許せる歳のとり方をしている。しかしRobert Plant。ああ。
その点ではスピッツの草野マサムネくんに負ける。彼は現在37歳だそうですが、白髪が出てこようとも、やっぱり少年臭さ、青臭さをぷんぷん残している。えらい。

というわけで、やっぱりこの勝負(何の勝負だ)、マサムネくんの勝ち!
なんたって言葉、通じるしさ。
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by masala_days | 2005-02-25 04:48 | イギリス話

勤労意欲のない人々

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[picture; My oldest sharemate of the room / Banaras, India 1999?]

今日はすごいぞ、一週間超ぶりに登校を決行。ひとえに先生に会いたいがゆえである(真面目)。ところがそうすんなりはコトが運ばない。

おとといから断続的に降り続いている雪のせいでまずは電車が遅れた。やっと来た超満員の電車に乗り込むと、発車してまもなく止まる。アナウンス、「大変もうしわけありません。もうすぐ復旧すると思います」と、なんだか非常~にやる気のない、僕知らないもんね的投げやりさ。込み合った車内で乗客は続々と携帯電話で会社等に連絡を取り始める。

いつも思う。こういう時のイギリス人はそこはかとなく嬉しそうである。会社をサボるいい口実だとでも言わんばかり、日本だったらちょっとでも通勤電車が遅れようものなら車内騒然となるというのに、イギリスではとたんに皆、和やかになり、「まったくしょうがないわよね~」などと知らない人同士肩を叩き合ったりしている。一応会社に電話する口調は「誠に遺憾で」という感じなのだが、その実、顔はほころんでいる。

乗客をとじこめること約20分、やっと動いたと思ったらまたアナウンス、「ええーと、理由はまだはっきりわからないのですが、この電車は次の駅で止まりまして、その先へは行かないことになりました。大変大変申し訳ありません。もう本当になんと言っていいか分からないほど申し訳ありませんが、次の駅で皆さん降りて下さい」などとくどくど謝る。実に呆れるほど長いのだが、誠心誠意謝っているというよりは、やっぱり「とりあえず僕のせいじゃないかんね」という感じ。車内では「まったくやってらんねーよ。おい仕事しろ仕事~っ」と野次が飛び、それに同調した声が飛び交い、誰からともなく失笑が漏れる。

イギリス人は諦めのいい人々だ。まぁたいてい私なら痺れを切らして怒りだすところでも、イギリス人にはまだまだ余裕のある地点であることがままある。それが自分のせいでないことがはっきりしている以上、無駄に怒りをばら撒いて疲れるのはやめよう、それよりはわが身の不運を嘆き合ってとりあえず笑っておこう、となる。

予告通り電車は止まった。ホーム一杯にあふれた乗客は大人しく列を作って出口へ向かい、あるいは地下鉄やバスに乗り換えを試み、格段の混乱もなく時は過ぎていったのだった。

やっとの思いで普段の倍以上の時間をかけて学校についてみると、ああわが愛しの先生はお休み。なんと私と同じくインフルエンザにやられて先週から休んでいたらしい。奇遇である。病気が重なったって別にどうということはないが、なんとなく同志という感じがして悪くない。

仲良きことはいいことだ。
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by masala_days | 2005-02-24 02:58 | イギリス話

嫌いな言葉

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[picture; A Laundry Man / Banaras India 2001]
There was always a same laundry man along the river Ganges.

インフルエンザ恐るべし、である。熱は下がったものの、いっこうに回復しない。食欲はなく、ひどい咳だけが続く。旅行中もそうだが、自分がまだきちんとした根っこを持たない地域で病気になると、私は途端に気が弱くなる。また再び日本の土を踏むことができるんだろうかとか、ああ真物の冷奴が食べたい、バンコクの中華街の屋台フカひれがもう一度食べたい、などと思いは巡り、からっぽの冷蔵庫に悲壮感は募り、一週間を過ぎる頃にはだいたい目も当てられなくなってくる。恐ろしいことである。

こういう後ろ向きな時は、嫌いな言葉がやけに耳につく。

料理本の「そして材料を順番に加えていきます」、「ゆっくりと炒めていきます」という言い方が嫌いだ。「~していきます」って、どうして「加えます」、「炒めます」じゃいけないのだ。はっきりズバッとものを言わんかズバッとっ! などとまったく剣呑である。が、本だけでなく、日本にいる時に料理番組などを見ていても「~していきます」は一種、料理関係の定番言葉のように頻繁に使われていてイライラした覚えがある。

「おつかれ~」も嫌いな言葉だ。
心のこもった「お疲れ様」という言葉はいかにも癒される感じがするのであるが、たとえば大学生なんかがサークルの帰りに仲間内で言い合うような「おつかれ~」は、なんだかおざなりで、「さよなら」の代わりに気軽に使われているような気がするというか、本当にお疲れの人に申し訳ない気がして嫌だ。今、学校でも若い若い日本人の皆さんとご一緒することがあるのだけど、別れ際に「おつかれ~」と言われると、「あたしゃーまだ疲れてなんかいないわよ。今日なんかまだまだ元気一杯余り余ってしょうがないくらいだわよ」とちょっとムッとする(これは三十路女の僻みか)。

学校にはまだ行けない。咳が残るうちは出られない。
外は小雪が舞っている。憂鬱である。

同居人いわく、今朝の私の第一声は「DIM SUMが食べたい」だったそうである。寝ぼけて言ったにしては真実味がある(DIM SUMは英語で「飲茶」の意味だ)。
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by masala_days | 2005-02-23 00:17 | 旅なんちゃって

肉食日和

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[Conjee M's special] Best power food after illness

私はベジタリアンではないのだが、思うところあって数年前から、普段は極力、動物性食品を絶った食生活をしている。同居人が菜食をする理由とは根本的に違って、なるべく出所の分かるものを食べたいというのが理由で、そう思うと自然、肉食を避ける方向にいってしまう。なんというかつまり、「食べるなら自分で卵から育てて自分の手で殺して食うぜ」的な、ちょっと野生児気味な理由。

それはそれで全然不都合なく、むしろ健康に毎日を送っている。ところが2ヶ月に一度くらい、モウレツに「肉だ肉だ肉だ肉だ肉だ~!」と、ガツンと肉食に溺れたくなる時期がある。

今回も熱にうなされながら思ったのは「立ち上がれ今こそ肉だ」(なんだそりゃ)でありました。

同居人に見つかるとうるさいので(本当に面倒な人を選んだものである)、彼の外出中にフラフラな足取りで「肉食だ!」という思いつめた瞳のまま近所のスーパーに駆け込み、イギリス名物ベーコンの塊を買ってきた。骨付き肉は骨が残るし、普通の生肉は臭いが残るので、こういう時の救世主はベーコンだ。

イギリスのベーコンはウマイ。日本の、あの塩気の強いカリカリした薄いものと違って、塊や厚切りで売っている。肉食の歴史はやはり本場なので、素朴でどうってことのない食材なのに奥が深い。産地・飼育方法も、ものを選べばそれなりに安心できる。以前、やはりイギリス人の夫と暮らす知人の家に遊びに行ったときに、この塊ベーコンをことこと1時間ほど茹でたものをごちそうになって以来、私の密かな好物である。

まったくもっていつのまにか私にとっての肉食は「禁断の楽しみ」になってしまった。なんだか知らないが罪悪感が伴う。それは同居人の手前というのもあるし、たぶん、自分でも気づかない他の理由もあるんだろう。まあ地球の資源は限られているから、できるだけ豆食いで土地を節約したいよな。わたしゃー動物が可哀想とかは全然思わないが「牛一頭を健康に育てるために必要な飼料と土地があれば、その何倍もの豆を育てられ、何倍もの人口に必要なたんぱく源を確保できる」という説にはとても説得力を感じる。先進国に住む人間はみなもっと肉食を見直すべきだと思うよ。ベジタリアンになる必要はないけど、日常の食事にさして意味もなく無意識に加えられている動物性のものは、実に不必要なものだと思う。これほんと。

だけど今日は肉だあああっ! 少量パックで買ったベーコンは厚切りになっていました。小鍋で茹でて、ちび丸青ライムをキュッと搾って食べる。

ああ肉です。

生き物のエネルギーをいただいてる感じがします。細胞のひとつひとつに力がみなぎっていくのが分かる。ボケ~ッとしていた頭も冴え冴えとしてくる。大袈裟じゃないのよ本当なのよ。

インドに住んでいた時のこと。レストランとか「うちはアルコールと肉は置いてません」って書いてあるのね。そのふたつがあると街の不良どもが夜な夜な集まってくるとかこないとか(笑)。つまりインドでは肉食はお酒と同じような位置に挙げられているらしい。やっぱり本来、もっとも原始的な人間の営みとして、肉食ってのは精神を高揚させる働きがあるんじゃないかと思います。毎日、病的に育てられた「工場製品」としての肉を食べていると、この感覚が分からなくなる。私はそれが怖い。

で、ベーコンの茹で汁をちょっと啜ってみるとこれがまた軽い塩味でいい出汁だ。もったいないので昨日作ってあったお粥にどぼどぼ加えてしまった。ちょっと香港とかの中国風の、コンジーらしきものになった。これなら肉の痕跡がないから、鍋に残しておいても同居人にはバレまい。

栄養補給はばっちり。証拠は全て腹の中。
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by masala_days | 2005-02-19 22:39 | インド話

病気して本当にミジメ~な姿になったので、

5年ほど前の美しかった頃の写真なんか載せちゃえっ!
えいえいえいっ。病み上がりの暴挙。
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by masala_days | 2005-02-19 18:37 | イギリス話

インフルエンザにやられた

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[picture; On the way to Leh Ladakh, the west-end of Tibetan culture / July 2001]
My friend Namgyal's car got stuck for 4hours by engine trouble. It was about 4000m above the sea level. Nothing was alive around us. Beautiful, but scary.

丸々4日、寝込んでました。私の場合、「旅慣れる=病気慣れする」という方程式が成り立ちまして(笑)、だいたい具合が悪くなる最初のとっかかりのところで、「これはやばい」、「これは大丈夫」というのがピンとくるんです。

今回はもう最初から「やばい」でした。ひさびさに40℃の熱が出ました。私、デング熱というマラリアに似た病気を二回やってるのですが、それに匹敵するしんどさでした。 で、診断はインフルエンザ。まだフラフラするけど、やっと起き上がれるまで回復。ああしんど。

学校ずっと休んじゃったよ。先生に会いたいわー(本気)。
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by masala_days | 2005-02-19 18:34 | 旅なんちゃって

負け犬は秘境がお好き。

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[picture] Zanzibar Tanzania, 2003 / A girl's smile healed me after coming back from Mt.Kilimanjaro trekking

It was such a hard trip, although the first few days were enjoyable as Kilimanjaro is a mountain which has gradual tracks. On the 4th day, I left the basecamp about midnight for the peak. The track was completely different from the ones I'd already encountered. This one was a steep, pebbled maze made by the volcanic eruption. About three in the morning, I got stuck half way to the peak. I couldn't step ahead, as my feet were just as heavy as lead. I was completely down by high altitude sickness. Each three steps required three minutes break. Such a slow march toward the peak. Old memories, both good and bad, started to haunt me. I felt desparate, I thought I was going to die very soon.

All of sudden, the sharp light captured me. My dull eyes tried to find what it was.

Sunrise! It was sunrise, which came out from the clouds. I saw all the thick red carpet of clouds downwards--I'd already climbed up higher than clouds. It gave me goose bumps, such a breathtaking moment I'd never ever seen.

It took another five hours to reach the peak. But I made it. It was definitely sunshine power which encouraged my sluggish feet to keep moving. At that time, I realised that I was a very primitive animal. I'd like to be a rational woman, but it isn't so bad to act on instinct sometimes. Nevertheless, I would say NO if someone asked me to climb it again.

日曜日に美容院に行った。これまで大してお金をかけていなかった分野なのだけど、最近、差し迫って身奇麗にしておかなくてはと感じる。放っておくとどんどん小汚くなる年齢である。

日系の美容院で楽しいのは、日本語の雑誌を読めることだ。ここで持ってこられる雑誌の種類で、自分がどう思われているかの、ちょっとした推察ができる。以前イギリス人経営の美容院に行ったら、どう見ても14~15歳の助手の女の子に、表紙にきらきら装飾の入ったティーンエイジャー雑誌を持ってこられて複雑な気分だった。老けていくのも嫌だが、若く見られすぎるのも困る。西洋人は適当にごまかせるからいいとして、怖いのは同じオリエンタルの人々の目である。けっこう細かいとこ見てるのよね。

さて美容院の雑誌だ。今回は「VOGUE Nippon 3月号」を持ってこられた。なんでNipponなんでしょうね。Japanにしといた方がかっこいいと思うんだけど。中途半端なジャパネスクは見苦しい。

しかし驚いたね。特集で「秘境できれいになる-インド・ブータン」ですと。旅慣れた負け犬は、そんじょそこらのリゾートではもう満たされない、次なるターゲットは秘境だ、ということらしく、去年できたブータンの海外資本系超高級リゾートホテルと、インドはラジャスタンの超高級マハラジャホテルが紹介されていた。オリエンタル趣味炸裂のお部屋とヨーガやトレッキングなどの余興とマッサージで癒されましょう、ですってよ。心優しいブータン人と触れ合い、子供たちがペンをねだるインドで厳しい現実に直面し、癒され鍛えられさらにいい女になりましょう、ですって。こりゃーたまげた。

ブータンは添乗員時代に一度訪れたことがある。私の元職場である旅行会社では、きつきつに詰め込まれた超ハードな日程のツアーが多く、旅を楽しむなんて瞬間は絶対になかった。たいがい2週間で3~4キロ痩せて帰ってくることになるハードさだ。ところがブータンだけは、見るところが限られているせいでひじょうに余裕のあるツアーだった。「まんが昔話」に出てきそうな山々が続く、とてもとてもステキなところでした(ツアー中何回も「♪坊や~良い子だねんねしな」が頭をよぎって困った)。

あそこに高級リゾートホテル~~~。
すでにあらゆる旅行市場に開かれたインドはともかく、ブータンは、ブータンだけは妙な勘違いをしたインテリ小金持ちに荒らされたくない。負け犬が癒されにいくとこじゃない。やめてくれーーーー。

一応私も文筆業者なので、予備知識のない不得手なジャンルの記事を書く時のライターの気持ちは分かるつもりだ。特に海外取材ものの場合、取材だけでも消耗しているのに、帰国してから締め切りまでにまったく余裕がないことが多い。調べ物をしたくても十分な時間がないのがおそらく普通だ。
本文や写真のキャプションは、「よく調べてきました」レベルには達してたと思うけど、なんというか、いかにも急場しのぎの寄せ集め、という感じ。でも写真は十分きれいなので、記事としては説得力があるんでしょうね。

あまり悪口は言いたくないのだが、この手のファッション誌が旅をテーマにするなら、ファッション誌らしくパリやらミラノやらの記事を載せて欲しい。そのほうが断然いい記事になるはず。負け犬だかなんだか知らないけど、「畑違い」のところで傍若無人にふるまってほしくないなあ、とちょっと思った(これってきっと、ちょっとひねくれた旅好きの人なら一度は思うことかもね)。
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by masala_days | 2005-02-15 07:42 | 旅なんちゃって


20代の暗黒時代をインドとイギリスその他あちこち季節移動し続け、30代、やっと日本国で社会復帰。8か月の産育休を経て、現在、働くかあちゃん。オットの不在中に衝動買いしたマンションの借金返済に勤しむ


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