<   2005年 03月 ( 11 )   > この月の画像一覧

突然ですが、よろめきドラマ Vol.1

妖しく光る赤い照明と、軽快なサルサのリズムに美代子は酔っていた。
ダンスホールでは100人ほどの男女が入り乱れて大音響に身を任せている。

こうやって激しく回されるの、ちょっと、いいわ。

と美代子は思った。

ジョージは時々、不敵な笑みを浮べながら美代子の身体を抱きすくめ、
頭の芯が痺れるほど何回転もしてターンを決めるのだ。
「何があっても基本のステップを死守するんだよ。いいね」
レッスンが終わって自由時間になった時、ジョージは美代子の耳元でそう囁いたのだった。それから美代子は、どんなに激しい動きの時も、頭の中でサルサの基本リズムである7拍を数えている。

One two three four, five six seven,
One two three four, five six seven,
One two three four, five six seven,

ロンドンに暮らし、毎日、嫌というほど英語に囲まれて過ごす美代子も、
数を数える時はいつも日本語になってしまう。けれど踊っている時は
きちんと英語のカウントが頭に浮かぶのが不思議だった。

彼女の手をとるジョージは、身のこなしひとつひとつに自信が満ち溢れていた。
足元のおぼつかない美代子を上手にリードし、初心者クラスではまだ
習ってもいないステップを強引に踏ませてしまう。

腕を引かれ、背中を押され、ただ彼の指示するままに動き回っているだけなのに、
美代子はいつのまにか、絶対に不可能だと思っていたスピンやターンをこなしている自分に気がついた。

曲が変わると時おり、ジョージは気まぐれに近くにいる別の女性と踊り出す。
美代子も誘われるままに別の男性とパートナーを組む。
すると今度は情けないくらいまったく踊れない。

ジョージじゃないと、駄目みたい。

美代子は相手の男性に申し訳なく思いながら、まごまごと不恰好にフロアを動き回った。横目でちらりとジョージを盗み見る。如才なく長身の美しい黒人女性をリードするジョージには、いつものおどおどした様子は微塵もない。抑えた動きに余裕すら漂っている。

ただの汗かきで冴えない青年だと思っていたのに、踊っている時の彼はうっとりするほど格好よく見えた。職場での彼とは別人のようだ。サルサを始めてからもう5年経つというから、フロアに立つのは今日が30年間の人生で2度目という美代子とはえらい違いだった。

職場での顔。踊っている時の顔。
ジョージっていろんな顔を持っているんだわ。
彼の、もっと別の顔も見てみたい。

そう思いながら美代子は、家ですでに床についているはずの夫の顔を思い浮かべた。
善良な彼には表裏がなく、その時々の気分がそのまま顔に出る。
男に身体を触られながら踊り陶然としていることを知ったら、顔を真っ赤にして
怒ることだろう。日本人の友人と食事をすると嘘をついて夜遅くに出歩いている自分が、とてつもなく悪い女に思えた。

ジョージは一時期、新入社員の女の子と噂になったことがあったものの、
うまくいかなかったと人づてに聞いていた。
ふとしたきっかけで彼がサルサのことを口にした時、美代子はほとんど反射的に、
「私、習ってみたい」と言っていた。日常に埋もれまいと必死でもがいていた美代子の、ほとんど叫びに近い訴えに、ジョージは驚いて目を見開いた。

それからである、毎週日曜日のこの密会が始まったのは。
といってもまだ二度目なのだが、美代子はすっかり本気で今後もレッスンを続ける気になっている。

サルサが好きなのか、ジョージが好きなのか。
……両方とも堪えがたく好きなのだった。
一度入ってしまったスイッチは、そう簡単にはオフにできない。
もっとうまくなりたい。もっとジョージのことを知りたい。

「なんとか生き延びたじゃないか。うまいもんだ」
「だってあなたが強引なんだもの」
「でも他の女性には、あんな無理矢理にリードしないよ」
「私があんまり下手くそだから、からかって遊んでるんでしょう」
「そりゃ、君に大いに気があるからね」

帰り道、鉄道駅まで美代子を送り届けると、ジョージはさらりとそう言い、
肩をすくめて地下鉄の駅の方へ去っていった。ひと気のない深夜の構内でひとり、
郊外まで行く列車を待ちながら、美代子はなかなか冷めやらぬ胸の動悸を持て余した。

長く薄暗く、寒かったロンドンの冬が終わろうとしている。
夜の空気はまだ冷たいが、底の方に春の匂いを孕んでいた。
甘く、そして危うい、小さな蕾の開きかけた香りである。

……続く……(のか?)
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by masala_days | 2005-03-29 09:17 | 突然ですが、よろめきドラマ

サルサ初体験

Thre is nothing unexciting when you experience something new. Imagine when you kissed someone for the first time in your life. My SALSA experience was just like that.

突然ですが、サルサを始めました。
なんかものすごく燃えた。
全然ステップとか踏めないんだけど、それなりに気分は味わった。
あの、パートナーにぐるぐるに何回転もされる感じがいいわー。
これからハマりそうな予感です。

過去の栄光:わたしゃー実はかつてクラシックバレエとジャズダンスを15年ほど習っていた。受験勉強やら何やらでやめてしまったのだけど、そういえばミュージカル女優になりたかったこともあったんだった。ほとんど10数年ぶりにまともに踊ってみて、やっぱり私って踊ることが好きなんだなあ、と思いました。

まずは腹の上にのっかった贅肉をなんとかしなければ。
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by masala_days | 2005-03-21 08:55 | イギリス話

小春日和

ほーら春先小紅♪ (古い……)。
と、思わず口ずさんでしまうほど暖かい日。朝はそうでもなかったのに、
午後になるにつれ汗ばむほどの陽気になった。
こないだまで雪が降り続いていたとは思えない本日のロンドンです。

イギリス人たちは、ここぞとばかりにこれみよがしに薄着でほくほく嬉しそうに、
「暑いわねえ」などと文句を言う。
去年、担任だったレイチェルに校内でバッタリ会うと、彼女もまた薄着。
「今のうちに暖かさを満喫しておかないと。いつまた寒くなるか分からないから」
と言っていた。朝気持ちよく晴れたのに午後はどしゃ降り、などということが
毎日普通に起きるので、彼女の言うことももっともだ。

明日の土曜日も暖かいらしい。楽しみ。
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by masala_days | 2005-03-19 08:34 | イギリス話

いいわけ連発の日

I've been in a sort of writer's block for the last few days. I'm pretty sure what the reason is, but yet I can't deal with it. Thanks and sorry for all those who came only to find nothing newly uploaded.

その1
ごめんなさい。
コメントいただいたり、トラックバックをしていただいたりしているのを、長いこと気づいていませんでした。そうかそういうシステムだったのか、と今頃気づいています。

その2
ええーと、春です。今日は朝からひじょうに風が強くて、生暖かい空気が充満していて、まるきり春到来という感じでした。

そんなことはさておき、ここ数日、思うところがたくさんありすぎて、文章にするには頭が乱雑に散らかりすぎていて、サボってました。見に来てくれていた方々、ごめんなさい。いえね、普通に軽い近況などを書けばいいところを、ついついモノカキなもので、何か読むに値する話を書こう、と思ってしまい、なかなか書けなくなる時期みたいです、今。春なものですから。

モノカキが書けなくなる状態を、「Writer's block」というそうです。私の場合、ネタがなくて書けないんじゃなくて、色々ありすぎて整理ができず書けないだけなんですけどねー。

そういえばつい先日、友人Tさんと話していて、遠い昔の中学生時代にしていたことなどを思い出した。よくよく考えてみれば、現在に至るまで私がしていることと、13歳だった私がしていたことと、呆れるくらい全く変わっておらず。

人間の本質なんてそうそう簡単には変わらないのだなあ、としみじみ思った次第。
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by masala_days | 2005-03-17 07:52 | イギリス話

インド映画にはまっていた話

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[Layered Posters on the Wall / Musoori India, 2001]
The wall of the building in the town was filled by cinema poser. No poster was peeled perfectly, it was a collage of many different posters.

3月26日にロンドンで、ZEE PREMIER というインド有数の映画雑誌が開催する映画賞の授賞式が行われるそうだ。私は毎年この賞が楽しみで楽しみで、あの手この手でテレビ鑑賞していたものだ(もうひとつ有名な賞に「Film Fair Award 」というのもある)。

駅で告知ポスターを見るまで、この授賞式がロンドンで行われていたことを知らなかった。ボリウッドの主要な俳優女優が結集する、ヒンディー映画ファンにはたまらないイベントです。ま、インド版アカデミー賞みたいなもんです。ひじょうに心動かされるものがあるのだが、ロンドンとはいえ西の外れに住む身には、会場がちょっと遠い。おまけに一緒に行ってくれる奇特な友人もいない。私はたいがいのことは「おひとりさま」でいける方だが、これはなあ、ひとりで行ってもなあ、完全に浮くだろうしなあ。

私がインド映画にはまっていたのは、98年~2000年くらいの間のことだ。
キネマ旬報社刊の「インド映画極楽玉手箱」という、今後おそらく二度と発売されることはないであろう、日本語で書かれた最初で最後のインド映画の辞典の執筆に、ほんのちょっとだけ参加したこともあった(今思えばあれに下っ端ながらライターとして参加できたのは本当にラッキーだった。楽しかったなあ)。

当時はまだ、古き良きインドの古典的観念に基づいた、まあ言ってみればベッタベタにインド臭い映画がつくられていた。最近のは変な具合で西洋の真似をしていて、どうもダメです。踊りの上手な魅力的な女優さんも極端に減ったし。

ああ、授賞式行きたいなあ。ミーハー魂をとことんまで煽られている。でも、行けないよなあ。無念。ああロンドンにいるのに~っ!

しかたないので芸能人遭遇自慢でもしよう。

去年のちょうど今頃、わたしは添乗員としてインド一周ツアーご一行様を引き連れていた。
ムンバイの空港で、搭乗ゲートに入る直前のボディチェックポイントにて。こういう場合、添乗員はまず先にチェックを抜けて、反対側でお客様たちのチェックが終わるのを見守る。だから私はグループの先頭にいた。身なりのいい、ルイ・ヴィトンのバックかなんかを持ったインド人女性の次だった。

よく見ると、その身なりのいいインド人ってば、女優のKareena Kapoor ではないか。
片手に読みかけの英語のペーパーバックなんて持ってたぞ。っていうか、彼女ってばものすごい名家出身の超サラブレット系ハイソ女優だっていうのに、なんでまた平民と同じチェックポイントに並んでいるのだ? インドってそういうとこ、お役所的というか融通がきかないというか、四角四面なのよね。

まあとにかくだ、彼女が終わったあと私は小さなブースに入ってピコピコ鳴る警棒でボディ・チェックを受けたのである。カリーナの豊満なボディに触れた同じ警棒である。をを。

よく見ると、隣の男性側の列には、Akshay Kumar、 Salman Khanまでいる。サルマンは噂通り、背が低くて、どうということはなかった。その後合流した彼女らしき女性も、けばけばしくてダメでしたねー。でも、一時期惚れ込んでいたアクシャイ。超かっこよかったです。

なんせ20人近くの大切なお客様を引率中だったので、あからさまに興奮するわけにもいかず、必死で冷静を保っていました。ああ、あれがオフだったら、どうなっていたか分からないな、私。

そんなことはどうでもいいのだ。ああ行きたいなあ、授賞式。
……興味のない人にはとことんどうでもいい話で、失礼しました。
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by masala_days | 2005-03-09 00:15 | インド話

お仕立て天国

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[Illumination of the Papier-Mache / Shanghai China 2004]

チョコレート生姜、食べました。
ゼリー状に固められた生姜エキスをチョコレートでコーティングしたものでした。
うまいのかまずいのか、結局、判断できませんでした。
きっと、ウニとかビールとか、何回か口にしていくうちにだんだん良さが分かっていく類の食品なのだと思います(疑)。

前述のアキオくんが、レストランに設置する椅子のサンプルが出来上がってきた話を書いていました。インドで楽しいのは、この手の「オーダーもの」が比較的簡単に、申し訳なくなるような料金でできる点です。

私は服作りにはまっていました。
下手な絵を描いてデザインを仕立て屋さんに持ち込んでですね、自分のサイズに合った服を仕立ててもらうんですね。私はチビのくせに体格はいいので、既製服がぴったり合うことは滅多になくて、はじめから袖の長さが合ったシャツや裾上げしなくていいパンツなんかをオーダーできるのが楽しくてしかたありませんでした。

バナーラスで私が行きつけていた店では、シャツ一枚仕立てて80ルピー(200円くらい?)でした。職人さんの手間賃より生地代の方が高いんだもの、申し訳なくなるよなあ。

でも職人さん、時々とんでもないものをこしらえてくれて笑わせてくれたもんです。
頭が入らないブラウスとか、右と左でデザインの違う袖とか。

私が存じ上げる、とあるインドの専門家が、
「インド人は、命令する側と命令される側にはっきり分かれる」
ということをおっしゃっていました。

私は仕立て屋さんでこの言葉をよく実感していました。

そこでは私が(言葉に若干の語弊があるかもしれないけど)命令する側ですから、職人さんはただもうひたすら、たとえそれが素人のいい加減なサジェスチョンであっても、私の言うことにひたすら従うわけです。だから時々、変な形になったり、着てみると動作に無理が出たり、服として機能しない「作品」ができたものです。

たとえば本当に熟練したベテランさんだったら、ここにスリットを入れないと変な形になるとか、この裁断には無理があるとか、彼なりの提案をしてくれます。が、数ヶ月の間に、何のコネもなく「これだ!」と信頼できる職人さんを見つけることはついにできませんでした。裕福なインド人はたいがい、代々続く、家族の衣服一切合財を受け持つお抱え仕立て屋さんを持っているそうです。

「なんでも思い通りにできる」というのは、一見便利で都合がよく思えるのですが、結局は何もかも自分の判断でやらねばならず、完成したものがちんちくりんでも文句を言う相手もおらず、ずいぶんと疲れることだなあ、とよく思いました。

大人になるのがツライのと一緒よね。
二十歳くらいで見合いで結婚しときゃよかったと、時々、思う。
(本日、支離滅裂気味なのは月曜日だからです。もう頭がわやになる忙しさ)。
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by masala_days | 2005-03-07 22:47 | インド話

Saturday Special

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[Plain Dal / Aaloo Matar with Paneer / Aubergine Coconut Masala / Chapati Bread / Ghee Rice]
プレーン・ダル、ジャガイモとグリーンピースとパニールのドライカレー、茄子のココナッツマサラ、チャパティ、ギーライス



うっ。なにげに先週と同じメニューだ。手抜きじゃないのよっ。
本日、同居人母が来ていたのだ。
イギリスでは明日が母の日なので、同居人が彼女を招待したのだった。
外したくないので同居人にメニューの提案を尋ねると、「先週のココナッツ風味の茄子とパニールでいいんじゃない」との答え。そりゃあなたが好きなメニューだってば。

日本のある一定以上の世代の人々も、未知の食べ物に対して警戒心が強いと思う。
それはイギリス人も同じ。個人的な印象では、庶民クラスになればなるほど食に伝統的に興味がなく頑なで、いつも同じようなものを好んで食べる気がする。ある程度の教養があり、外の世界に興味を持ったミドルクラス以上の人々の方が、多少の勘違いをしつつも積極的に新しい料理を受け入れている。

同居人母は私が料理する場面に出くわすたびに、隕石とか新種の虫でも見るような顔をして鍋を覗き込んだりしていた。だから当然、これまで私の料理を食べていただいたことはない。

一応、イギリス式に野菜は柔らかめ(でも歯ごたえは譲れないので残した)、辛さ控えめ(どのみち同居人も辛いのが苦手なのでいつもマイルドだ)、ナイフとフォークで(インドではスプーンとフォーク)出してみた。気分はすっかりオープンしたてのレストランの料理人である。

私は残りのチャパティを焼くのに忙しい。とりあえず同居人に彼女のお供を押し付けた。
「これは何、え、チーズなの? この葉っぱは?」
「毒を盛ってるわけじゃないんだからさー、早く食べなよ」
「レストランに来たみたいねー」
「今日は主に南インドのレシピでね、ほらこの葉っぱ、カレーリーフって言う南独特のスパイスで、あとこの茶色いのはクミンシード、胃腸の働きを整えるんだよ。ライスはギーというインドのバターを使っていてね。いい香りでしょう」

……同居人、私がいつも言うことをそっくりそのまま得意気に説明している。
聞いてないようでちゃんと聞いてたのね。
ま、その私からして渡辺玲さんの本から得た知識を彼にそっくりそのまま得意気に説明しているのである。
まるで伝言ゲームだ。あはは。

料理はひとまず気に入っていただけたようでホッと一息。

「週に一度でもこうやってちゃんとしたものを食べるって大事よねー」
この発言はどうやら、数日前に放映された、「裸のシェフ」ジェイミー・オリバーくんが出ているテレビ番組に影響された模様(彼女はこれまた典型的イギリス人としてテレビをこよなく愛している)。

この番組はちょうど友人Tさんも見ていて、金曜日に彼女に会った時に、イギリス庶民の食生活の想像を絶する実態を語ってくれていたのだった。

ジェイミーくんが小学校を訪れて子供たちに好きな食べ物を聞く。「チップス(ただの揚げたジャガイモです)」、「ポット・スナック(カップ麺のようなもの)」などなど、ものすごいジャンクフードの羅列になった。彼らの食生活を改善するため、ジェイミーくんがお母さんたちに「健康メニュー」用の買い物リストを手渡す。ところがお母さんたち、そもそも野菜の名前をよく知らず、「ねえこれ何?」と首を傾げてしまう……。

私はかねがね、同居人の食生活はジャンクフードで成り立っているのだなあ、と思っていたのだけど、どうもそれはかなりマシな方だったらしい。たとえ出来合いのものでも冷凍食品でも、いちおうは身体のことを考えている。パンは胚芽入りの茶色いやつだし、バターは使わずマーガリンで代用してるし、塩分控えめだし、脂っこいものは避けているし。あやしいながらもバランスのとれた「食事」らしき体裁を整えていた。

彼はほとんど毎日同じ「缶詰ビーンズと冷凍ベジ・ソーセージと即席マッシュポテト」という食事でも幸せそうに生きている。その彼が、
「まったくさあ、あれだけジャンクフードばかり食べてたらおかしくなるよねー」
などと口を極めてジェイミーくんの番組に出ていたお母さんたちをののしったのは、なんだかすごくおかしかった。

「缶詰ビーンズと冷凍ベジ・ソーセージと即席マッシュポテト」。
これって日本人の「納豆卵と白いごはん&お味噌汁」みたいなものなのかもしれない。
だとしたらあんまり同居人ばかりを笑ってもいられないなあ。わたし、このメニュー毎日続いてもちっとも困らないからさ(笑)。

しかして同居人の母の日のプレゼント。「Chocolate Ginger」なるもの。
チョコレートの真ん中に生姜がゴロンと入っているらしい。
「おいしいのよ。ふたつ、あなたにあげるわ」
と同居人母は素晴らしく寛容に微笑み、私にチョコレート生姜を分けてくれた。

その後、数時間に渡って、試食しようかどうしようか激しく迷っている。
うーん。チョコレートに生姜。生姜とチョコレート。そう来たか。

……やっぱりイギリス人の味覚センスは分からない。
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by masala_days | 2005-03-06 07:01 | イギリス話

浪漫放棄時代

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[Buffaloes' Bathing in the River Ganges / Banaras India, 2001]


ついに携帯電話もつぶれてしまった。

数年前にタイで購入したモトローラのもので、前時代的というか超旧式というか、とにかくかっこ悪い携帯電話の見本のような代物で、おまけにタイ文字でメールが打てるという、自慢なんだか何だかよく分からない、全然、役に立たない機能がついたステキに胡散臭い携帯電話であった。

去年の暮れに、トイレに落とした。
あまり思い出したくないので詳細を述べることは避ける。
いちおう、ドライヤーで乾かしてみたが、ぴくりとも動かなかった。
それが数日後、まるで何事もなかったかのように生き返った。
「へんなやつだ」
そう思いながら、使い続けていた。

あれから2ヶ月超たち、どうやら今度こそお釈迦のようだ。
充電ができなくなった。電池の寿命かとも思う。が、そんな大昔の機種の電池が、タイから遠く離れたイギリスで見つかるとは思えない。まあ、新しいのを買うのが賢明というものでしょう。
しかしほんとに私の周りでものがよく壊れる。恐怖のデストロイヤーだわ私ってば。

日本にいた時、ひねくれ者の私は携帯電話を持っていなかった。
学生時代にいち早くポケットベルを入手して使いこなし(時代が反映されるよなあ)、携帯電話もみんなが持つより早く持っていた私も、いつのまにか「そんなものは、いらん」と思うようになっていた。

携帯電話が当たり前になってから、待ち合わせが下手になった。
逢いびきにロマンがなくなった。

「あ、もうすぐ着くけど、今日の店どこだっけ?」
「今どこ~? 駅に着いたら電話して」

こんな会話が、たぶん日本だけではなくて、世界中の携帯電話普及国で毎日数え切れないくらい行き交っていることだろう。

それでも私は、「何月何日何時にどこそこで」という旧来の待ち合わせが好きだ。
なじみの喫茶店でぬるいコーヒーなんかをすすりながら、待ち人を待つ。
約束の時間が過ぎたりして、「来るのかな、来るよね」なんてちょっとドキドキしながら入り口のベルが「ちりん」となるのを聞く。
「やあ、待った?」
「来ないかと思って悲しくなっちゃったよ」
「ごめん」
そういう、莫迦みたいに原始的な待ち合わせがいい。お互いの位置を連絡しあいながら、じわりじわりと接近していく携帯電話式待ち合わせは、現実的ではあるかもしれないがロマンティックじゃない。

電車に乗ると、みんな同じ顔をして、同じような角度で顔を伏せ、ひたすら携帯電話を見つめて「ちこちこちこちこ」とメールを打っている。これ、怖いです。

こまめな携帯メールなんかいらない。一日3回の携帯メールと、一年に一度の生身の誰かとの熱いキスなら、わたしゃー迷わず後者をとるよ。ってどうしてそういう例えになるかなあ……。

旅行している時、「通信事情が悪い」というのはひとつのメリットだった。
届くかどうかいまいち怪しげな葉書なんぞを、ちょっと切ない気分でしたためるのが楽しかった。

まあ、あの陸の孤島、最後の秘境ラダックですら、去年訪れたら高速インターネットがつながってたからな。私を溺愛するうちのばあちゃんは、私が長い出ずっぱりの旅行をするたびに「寿命が縮む」と嘆いていたが、「携帯電話とメールのおかげでやっと夜眠れるようになった」と言っている。猫の鈴みたいなもんである。どっちかというと、今年は80歳になるのに、まだホイホイ自転車に乗ってスーパーに行くのが日課なばあちゃんの方が心配である。「せめて安定した3輪の自転車にしてよ」と再三に渡って頼んでも、「あれはどうも見た目が年寄り臭くて、かっこ悪い」とか言下に拒否するのだ、この人は。

そんな私、本日インドはバナーラスにいるアキオくんという友人とチャットなんぞをしてみた。おお、すごいぞ私。

アキオくんはもうずいぶん長いことバナーラスに住んでいる。あれ、何年だっけ? 忘れちゃった。日本語教師をしたり、会社をやったり、およそ一般的日本人男子に似つかわしくないセンスでインドに住み着いている。たまにすばらしく日本的なオヤジセンスも披露してくれる、ナイスな青年である。どういう成り行きか、彼は過去何年かの間に私が恋に落ちたほとんど全ての相手を知っているので、私はよほどのことがない限り、彼には逆らえないことになっている。弱みを握られるってツライ。

去年だったかな。彼はバナーラスにビルを丸ごと買った。住居兼商売用で、所用で再びインドを訪れていた私は、改装したてのぴかぴかで快適なおうちに数日間、居候させてもらった。当時、階下はまだぼろぼろだった。そこが今はカフェレストラン仕様に改装されて、オープン間近だという。

「インドの全人口から、ひとりたった1ルピーずつだけとったとしても、10億ルピーだぜ」
バナーラスという格好の観光地にいながら、あくまでもインド人を相手にした商売にしか興味のないアキオくんであった。

そういや、私がバナーラスにアパートを借りて長期滞在していた当時、もやしが入手できないというので、彼は豆からもやしを育てる実験なんかもしていたな。
「アキオビルが完成した暁には、地下に『もやしルーム』つくってね。で、レストランで『春のもやしフェスタ』かなんかやって、もやしのうまさを広めよう!」
そんな私の希望は、覚えていてくれてるだろうか。

自然の理。時が過ぎ、自分と周囲の環境が変わるにつれ、バナーラスの記憶がどんどん薄れていく。未来は過去よりもずっと大切だけど、嬉しいこと悲しいことキツイこと、それら全てを呑み込む「生」のエネルギー、色々な記憶のあるバナーラスと接点がなくなっていくのはちょっと寂しい。

私はアキオくんに3000ルピーの借金がある。タイかどこかに出ていた間に、家賃を立て替えてもらったのだった。それを返してしまったらバナーラスに行く口実がなくなってしまいそうで、数年経った今も返していない。

アキオくん、ごめん。今度行ったら絶対返す。


↓アキオくんのサイト
JAI通信
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by masala_days | 2005-03-05 08:16 | 旅なんちゃって

急に米が食べたくなった。

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[Leek & Mushroom Pilaff M's special]
リークとマッシュルームのピラフ

私はいわゆる「お米」とか「パン」にそれほど執着しない方だ。主食がなくておかずだけ、あるいは主食とおかずの区別が曖昧、なんて食事でも全然困らない。

でも、やはり日本人だ。まずい米には腹が立つ。
本日のランチ、高級路線のスーパー「Waitrose」で大枚はたいて買ったお寿司の米が泣きたくなるほどまずくて、しばらく立ち直れなかった。

あまりに悔しかったので、帰宅後、あり合わせの野菜とバスマティ・ライスでピラフをつくる。リークというのは、長ネギをもうちょっと太くしたような、(たぶん)イギリス独特の野菜だ。日本の長ネギよりも辛味が少なくマイルドで、水気が少ない。

厚手の鍋にオリーブオイルを熱してバター少々を溶かし、みじん切りのニンニクをきつね色になるまで炒める。そこに太めの白髪ねぎ風にカットした(うまい表現が見つからない)リークを加え、しばらく炒める。リークがしんなりしたら、スライスしたマッシュルームも加える。

そこへインドの香り米バスマティ・ライスを加える。ピラフの場合、なんとなく風味が飛ぶ気がして私は米を洗わずに使うが、気になる場合は洗ってもいいと思う。米が透明になってきたら、上質なスープストックを米の量の1.5倍、バジル、オレガノを加え、蓋をして強火であおる。

鍋の中で沸騰する音が聞こえたら、弱火に落とす。耳を澄ませ、鍋肌に「ちりちり」とちょっと焦げ付くような音がし始めたらもう一度強火にし、30秒待って火を消す。そのまま5分くらい置き、蓋を開けたら米粒をつぶさないように一気に切るように全体をざっと混ぜ、粗挽き黒胡椒をパラリとかけて、できあがり。

インドにいた時、炊飯器を持っていなかったので、鍋でお米を炊くのがうまくなった。毎回律儀に「はじめチョロチョロなかパッパ、赤子泣いても蓋とるな」という例の呪文が頭の中を巡り、それでもついつい蓋を開けては蒸気にむせたりしたものです。水の量がポイントだと思うのだが、ちゃんとした分量を量る甲斐性がないの。いい加減なレシピでごめんなさい。

米は絶対にバスマティとか、ジャスミン・ライスとか、インディカ米とか、いわゆる長米が向いてます。リークは独特の甘みが出ていい。長ネギで代用するともうちょっとシャープな味になると思う。

スープストックは煮詰めて隠してあったベーコンの茹で汁を使った。お肉の出汁はやっぱり味がまとめやすくていいですね。クノールとかのストックはどうもあからさまに化学調味料の味がして好きではない。オーガニック流行りのイギリスでは化学調味料不使用のストックが手頃な値段で売っていて便利です。でもやっぱり、自分でとった出汁はうまいよなあ。

しかし、ネギとにんにく、肉出汁、マッシュルームのピラフなんて、めちゃめちゃベジタリアンの神経を逆撫でしそうなメニューだ。はっはっは。西洋のベジタリアンはあまり気にしないが、インドとか東洋系の菜食では玉ねぎ、にんにくはご法度で、きのこ類も肉に似た味がするというので嫌う人が多いのだ。

適当につくったわりに、今度は泣きたくなるほどうまかった。
ひとまず満足。
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by masala_days | 2005-03-03 05:01 | イギリス話

神様はつらいよ

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[Tokyo Twilight / Hibiya Tokyo Japan, 2000]
I was working as a sales representative and holiday rep in travel agency. It was such a hard work that I sometimes felt like I was just a gear. One autumn day, on the way back from the Air India office, just before I went underground, I saw a beautiful sky. The inorganic huge city suddenly showed its face as an oasis in the desert.

15名定員のクラスが今週は6名とこじんまりしていい雰囲気である。このくらいの、多からず少なからずという人数が一番やりやすい。長くいると色々な国から来た生徒さんたちと接することになり、クラスの雰囲気はその時々の面子で変わる。先週まではアルゼンチンから団体で来た少年少女たちが過半数を占めていて、こちらは一気に老け込んだ気がしたものだ。

今週は、スロバキア人、スウェーデン人、ドイツ人がヨーロッパ勢で、中国(大陸)人、韓国人、日本人と珍しくオリエンタルが半分もいて、すべて女性だ。韓国女性と私は固定メンバーで、まあ3ヶ月、私はもしかしたらそれ以上いるかもしれないので、すでに主ですねえ。

うちの先生は、いわゆる「議論になりそうな話題」を出して生徒たちに議論させるのが好きだ。宗教とか、政治的なこととか。先生が出したトピックに関して、生徒間で壮絶な議論に発展することもよくある。喧々諤々となるに違いない話題を振っておいて、あとは高みから文法や単語の間違いに耳をすませているのだから、教師なんて悪趣味な商売である。

南米勢とヨーロッパ勢は文化的に議論慣れしている。基本的に人の話なんか聞かないでどんどん自分の言いたいことを言える人たちだ(ちゃんと大人な議論ができる人ももちろんいる)。対するアジア勢は、「人の話は最後まで聞きましょう」、「人の揚げ足をとるのはよくない」、「自己主張は悪」という倫理観が骨まで染み込んでいるので、この手の議論になるとまあ、静か~になりますねえ。みんな会話力に問題はないのだけど、体質的に議論ができないようになっている。まったく、「黙っている=何も考えていない」と判断する人たちの中に放り込まれると、気の弱い私なんてどうしていいか分からなくなっちゃう♪(ここ、突っ込まないように)。

今日はモーセの十戒がテーマ。「あなたがもし、ひとつ取り除くとしたらどれか。またその代案を考えよ」という、もういかにも白熱しそうなトピック。

一番手の私は、「絶対唯一神しか認めない」という最初の戒律を除いて、「自分は自分の神様を信じることにして、とりあえず他の色んな宗教も認めましょうよ」というのを代案にした。

私、ことなかれ主義の日和見主義者なので、議論とか好きじゃないのー。それもだいたい文化的背景が大きく違う人たちと好き好んで宗教の話なんかしたかぁない。だからまあ、十戒からひとつ選ぶとしたら、御時勢的にもこれが無難なセンだろうと思ったわけです。

ところがどっこい。意外なところから強硬姿勢が返ってきた。スロバキア人の女の子だ。彼女は敬虔なカトリックで、自分の神様しか信じていないという。先生も横槍から色々チャチャをいれてきて(絶対楽しんでいるに違いない。くそーっ)、まあヒートアップしますわな。

いつもだったら静かに座っているだけだったのに、今日はもう私がめちゃめちゃ話題の中心である。わたしゃー議論が嫌いだって常日頃言ってるじゃないか! 先生ってば、仕掛けたな。ちくしょうめ。

ほんとに疲れました、今日は。
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by masala_days | 2005-03-02 00:29 | 英会話あれこれ


20代の暗黒時代をインドとイギリスその他あちこち季節移動し続け、30代、やっと日本国で社会復帰。8か月の産育休を経て、現在、働くかあちゃん。オットの不在中に衝動買いしたマンションの借金返済に勤しむ


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