Dodgy alleyの無理やりバーベキュー

うだるような暑さだった先週末、うちの先生が急になにを思ったか、
「バーベキューをしよう!」と言い出した。
都会のど真ん中のフラット暮らしで、一体どこでやるのか疑問に思っていると、
先生宅の前でやるという。言っておくがそこは思い切り普通の路地である。
もちろん個人のスペースではない。

ちょっとそれはどうかと腑に落ちないものの、近所のセインズベリーに
使い捨てバーベキューセットを買いに行った。
そういうものが存在することを、イギリスに来てから知った。
オーストラリア人ほどじゃないと思うけど、イギリス人も天気のいい日の
バーベキューに至上の喜びを見出しているように見える。

バーベキューったって、我々がおぼろげに想像する、緑の芝生のガーデンで、
グラスワインを片手に人々と歓談する、みたいな何やらお洒落なものではなく、
たんに延々と肉の塊を焼くだけ、みたいなシンプルというよりは
粗末とでもいえそうなシロモノである。

時すでに夕方。考えることは皆同じ。
この日、使い捨てバーベキューセットは売り切れで、
先生はがっくりと肩を落としていたのでした。

しかしおかげで私の頭には「バーベキュー」の文字がはっきりと刻み込まれてしまい、
こうなると私はとことんしつこいので、
ついに昨日、ホームベースという家庭用品センターみたいなところまで出かけ、
くだんのバーベキューセットを購入、リベンジとあいなった。

さて先生宅の路地。なんつーか、パブの裏手に位置していて、
汚い、暗い、狭い、場末の雰囲気たっぷりの、
住民をして「dodgy alley(危険な小道)」と言わしめる、
なんとも怪しい路地である。

ここに炭を入れたアルミのベコベコのバーベキューコンロを
置き、われわれは延々と肉やら野菜を焼いた。
10時近く、この時期は日暮れが遅いので、ようやく暗くなってきた頃合いだ。
猛暑はまだ続いている。日中ほとんど呼吸困難と思えるほどの熱風に耐えた日だ。
そんなところへ涼しい風なんか吹いてきて、湿気を含んだ空気の中に植物の青臭い
匂いが潜んでいたりして、それはそれでなかなか風情がある。

同じフラットの謎のポーランド人がどこへともなく家具を運び出していたり、
ジャンキーもどきの隣人がうろうろしたり、パブの酔っ払いが迷い込んできたり、
向かいの建物の謎のアフリカ組合から妖しい赤い照明が漏れ出でていたり、
なかなかスリリングな場面設定であった。

ジュージューと炭火で焼いた骨付きラムは香ばしくてとろけるようで、
「こんな時間にこんなもの食べるから太るんだ」と文句を言いながら、
ついつい手が出る夏の夕べ。うーむ真剣にいけない。太る。

ところでこの路地、何気に私の馴染みのインドはバナーラスの路地裏に
似た雰囲気がある。実はちょっと気に入っていたりする。
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# by masala_days | 2005-06-22 22:45 | イギリス話

ロンドンHISお客様を舐めてるわ!

来週ちょっとだけパリに行ってくることにした。
なんせずっと観光もしないで勉強していたのだもの、
たまにはパリよパリよパリよ。

と、思ってチケットを取ろうと電話したロンドンのHIS。
名指しですまんが、あまりになってないよ、対応が。

そんなわけで私はものすごーく怒っている。

空席調べるだけなのに、なぜ無言のまま10分も待たせる?
私の電話、無意味に待たされている間にクレジットの残高が
なくなりそうなので待てないと訴えると、ではかけ直すと言って切ったきり、
待てども暮らせども電話がこない。

舐めてるんでしょうか?

と怒り心頭に達していたら、なんだかものすごーく覚えのあるスースー系の香りが。
……今週からタイ人の生徒さんが数人入ってきたのでした。
彼女たち、タイ人必須アイテムの鼻スースーインヘラーをここロンドンでもご愛用。
なんかものすごーくタイに行きたくなった。

ああそんなことよりHIS、しっかりしてくれ。
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# by masala_days | 2005-06-21 00:17 | イギリス話

蒸し風呂の週末

これを書くと絶対にアキオくん http://www.jaico.net/index.php は怒ると
思うんだけど、先週末のロンドン、またまた鬼のような暑さでした。

前回「鬼のように暑い」と書いたときは、カラッとタイプの、日陰に入ればまだなんとかなる
暑さだったのだけど、今回は直前に雨がふったせいで、イギリスとはとても思えない
湿気とともに熱気が襲う、悪夢のような猛暑でした。

「暑くて眠れない。寝苦しい」という体験を、イギリスに来てから初めてしました。

関節にたまる汗が気持ち悪くて何度も寝返りを打ち、シーツはぐっしょり、
コンクリートの壁に顔を押し付けてなんとか涼をとり……。
明け方にタイのどこかのビーチにいる夢を見ました。
それも優雅なやつじゃなくて、なんかオドロオドロしいやつ。

さすが「気温があがると小躍りするイギリス人」も、今回は文句を言う人が
ちらほらいた。
土曜日、所用でセンターに出たのだが、冷房なんてものがないロンドン市バスは
「湿度95%、気温38度」という感じで、乗客はみなぐったりしていた。
ベーカーストリートから我が家までの20分ほどで私は完全に気持ちが悪くなり、
帰宅してからずっと頭痛で寝込みましたよ、もう。

ああもうやだ。
イギリスが暑いなんて、ゆるせないわ。
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# by masala_days | 2005-06-20 21:44 | イギリス話

James Bluntにあこがれる。

うれしい。ああ嬉しい。

昨日、ケンブリッジ英検のすべての課目が終わりました。
受験生の心理、大学受験のときと全然変わってません。

朝9時から午後4時までぶっ続けで、
リーディング、ライティング、グラマー、とハードな課目の
3連続。

終わった瞬間は冗談抜きに息も絶え絶えという感じ。
ま、やるだけはやった。予想通り、グラマーが全然できなかったので、
合格はちょっと厳しそうだけど……。

ずっとダラダラ続きなのに、肝心の瞬間になると
ものすごい集中力が出るB型なのでした。

最近ずっとJames Blunt という人のアルバムを聴いている。
イギリス人で、軍隊にいたことがあるとかいう男前な歌手(と最近は言わないのだな)。
BBCの朝のニュースに出てたけど、みんなの好みを寄せ集めました、
みたいな顔しててなかなか良し(←こういうところに自分のオバサン的側面を感じる)。

番組出演中、You Are Beautiful という曲のビデオを流してた。
吹雪の中で、一枚一枚服を脱いでいくジェイムス。
なんだかシチュエーションがよく分からないながらも、
軍隊だけあって鍛えぬいたステキな体躯でございました。

私は特に音楽好きではないのだけど、わがいとしの先生が最近毎日
この人のアルバムを大音量でかけるので、「安易だなあ」と思いながらも
キャッチーなメロディに頭を侵食されている。
ひじょうにストレートな分かりやすい歌詞なので、英語の勉強にもいいかも。

そうそう、時々裏返ってヨーデルっぽくなる声がいいですよ。
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# by masala_days | 2005-06-17 21:13 | 勝手に宣伝部長

異常気象だ!

本日、鬼のように暑い。5月のイギリスとは思えない。
なんと30度超えたようですよ。

5月のインド(40度を軽く超える灼熱の地だ)にかつていたことのある私が、30度で「暑い」と抜かすのは非常に不本意なのだが、だいたい、イギリスに来てからというものの、「うう。寒い寒い」とばかり言ってきた身にしてみると、30度はもはや驚異的な暑さなのです。

それは新参者の私なんぞより、過去何千年の歴史を暗い陰気な天気とともに過ごしてきたイギリス人のほうがもっと切実で、なんつーか彼らは、ちょっとでも暑くなると喜び勇んで太陽の下に出て行く遺伝子を持っているのだな。今日のイギリス人は本気で小躍りしている。みんなニコニコ、「暑いわねえ」と口では文句を言いながら、半裸で街を練り歩くったらもう、でも誰も責めない。それくらい貴重な「暑さ」だから。

以前タイにいたとき、日本にいる友人が電話をかけてきて、「寒いよもう。雪降ってるよ」とぼやいていた。その時タイは蒸し暑さ絶好調。私はエアコンなしの宿で毎晩眠れなくて困っていた。その時の友人の「寒いよ」という言葉は、ほとんど何かとても許しがたい自慢のように思えたものだ。まこと人間というものはないものねだりをする生き物である。今ここで束の間の30度を貪るように「暑い」と言って過ごすイギリス人を、私は心から愛す。マジ。

学校でも先生方、みなさん笑顔です。昼休み、外のパティオは人で鈴なり。みんな、嬉しそうに「暑いよー」と言っている。いっぽう、アジア系の生徒はシミ・そばかすの驚異にさらされて日陰にいるのが印象的です。もちろん私も日陰派だ。シミ、こわいもの。
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# by masala_days | 2005-05-27 22:56 | イギリス話

試験だ試験だ!

c0036998_2254433.jpg[Dead End. Don't look back, red behind, amber forward / Tokyo 2000]

CPEの最初のリスニング・テストまで、いよいよあと10日あまり。そのご、スピーキング、ライティング、と3週間にわたってじわりじわりと試験が続く(実質3日間なんだけど間があく)。

1日で終わらせてくれぃ、と思うものの、やっぱ体力勝負なので分けてくれて正解だ。

追記;BBCの朝のニュースで、インド人俳優スニール・ダットの訃報を知る。すごく有名ということは知っていたけど、昔の人なので全然ライブで知らない。イギリスのニュースに出るほどの人物だったのね。なんか、「インド政府に資産を国外に持ち出せないようにブロックされてそれを取り戻すのに時間がかかった」とかなんとか言ってたような。
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# by masala_days | 2005-05-26 22:08 | 英会話あれこれ

Sumac に夢中

The Guardian誌の週末版、いろいろ読み物付録が充実していてお気に入りだ。

先週号では有名イタリア料理店のレシピをどかーんと載せていた。
そんなわけで今週はずっとチーズとバルサミコ酢とオリーブオイル多用の
日々が続いている。パスタも好きなんだけど、太りそうであんまりつくらない。

さてイタリア料理もさることながら、同じ冊子で連載している「エスニック食材図鑑」
みたいなページで紹介されていたのが「Smac」。なんとかベリーというフルーツを
乾燥させて粉末状にしたスパイスの一種で、カバブなどの肉料理や、サラダの風味づけ
などに使われるそうです。中近東で一般的とか。

というわけで、さっそく購入。近所のイラン系コーナーショップ(雑貨屋兼食材屋?)
にあるに違いない、と踏んで意気揚々と入ったらやっぱりあった。
ロンドンって人種入り乱れてるから、こういう時すぐに珍しい食材が手に入るのが嬉しい。

味見。酸っぱ甘い。さすがはベリー系。こういうフルーツものをスパイスとして使うって、
これまでぜんぜん思い浮かばなかったなあ。インド料理とかと中東料理、共通して使う
スパイスはあるだろうけど、このSmacは聞いたことがない。知らないだけかもしれない。
インド料理であえて似たものを探すとすれば、タマリンドか。

私は一発でそのさわやかな酸味にやられてしまって、なんだか毎日Smacづくしです。
ひき肉を炒めて最後にパラリ、ヨーグルトにパラリ、オリーブオイルとSmacでサラダ、
などなど、当分はまっていそうな気配。
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# by masala_days | 2005-05-18 22:50 | 旅なんちゃって

最近のトホホ

「お姉さん役」を演じなければならないことが増えてきたこと。

「エラそうなオバハンにだけはならないように気をつけよう」
と、つねづね思っているのだが、相手があんまり甘ったれた口調だと、
ついついこちらも言葉がきつくなる。

「これって自分に言い聞かせてる面もあるよなー」と私は思っているのだけど、
相手からしてみたらただただ威圧的なだけかもしれない。
しかも英語だと私はなぜかドスのきいた声になるので、ますます怖い。

そうそう、クラスでは一番ダメちんでどもってばかりの私も、自分より言葉が
おぼつかない人に対してはスラスラ自信たっぷりにものを言えるのである。
日本語のときは喉から声が出ているのに対して、英語のときはハラから
声が出る(それでも疲れていたりすると日本語のへなへなした発声で
英語を話すので、なんか中途半端な感じになる)。

昨日の困ったちゃんは実に粘り強く、いかに自分が傷心かを訴え、
「もう私は彼に直接会いたくもないので、現在の恋人であるあなたが(だから違うってば)、
彼の家においてきた私の荷物をとってきてくれ」とか言っていた。

もちろん断りました(怒)。自分で行け、自分で。

あくまでも笑顔で優しげにきついことを言い募った挙句、
相手が言い返せなくなって、「勝ったわよ!」「言い負かしたわよ!」と
心の中でネガティブに喜ぶ瞬間が嫌だ。
すごい悪意に満ちたお局様みたいな気分になる。

ああいかん、怒りは人を醜くするねホント……。

でも朝、「病院に行きたくないよー。痛いのヤだよー」とビービー泣き、
病院に行けば行ったで「みんな子供連れだよー。夫が付き添ってるよー。
あたしゃひとりだよー」と鬱々としていたというのに、このアホな彼女に
呆れたり怒ったりしているうちに、とりあえず元気だけは取り戻したのは事実である。

うん、ものは考えようだ。
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# by masala_days | 2005-05-17 22:02 | イギリス話

週明けからいやんなっちゃう

ああもう本当に困った人がいたもんだ。

週明けの本日、持病がぶりかえした気配があり、体調悪くて
病院から職場に直行した。

すると思いつめた目をした女の子が私を待ち構えており、
話があるといい、有無を言わせず外に来てくれと。

おいおいおいおいぃぃぃ。月曜日は忙しいんだよ。
と思いながらも、彼女にはじゃっかん、同情すべき点もあったので、
つきあった。

彼女は私が最近親しくしている某氏とすこしの間付き合っていたことがある。
すでに関係消滅して数ヶ月経つのであるが。
が、最近は私の影がちらついているので、真相をつきとめるべく、
直談判に打って出てきたというわけだ。

そんな彼女も別に子供という年齢じゃなし、バカじゃないかと思うんだけど、
かなり思いつめているようなので下手に刺激してもいけないなあ、と
つとめて大人な対応をしてみた。

とはいっても私も別に某氏と付き合っているわけではない。
ま、好ましく思っているのは事実で、しょっちゅう会っているのも事実だが、
お互い気楽な独り者の身分を捨てる気になるほど惚れ合ってるわけでもなく、
単に似た者同士の仲良しだというだけである。

某氏はもう彼女のストーカーぶりにうんざりしており、しかし彼も大人なので
それなりに誠意ある対応をしていたのだが(きっとそれが変に彼女に期待を
持たせてしまったのであろうが、はっきり言うべきことは言ってはいたぞ奴は)、
ついに先日ぶちきれて「もういい加減にしてくれ」と言ったそうだ。
で、にっちもさっちもいかなくなった彼女は、今度は国の父親に現状を訴えたらしい。

「私のお父さんなら彼をクビにする力がある」
ですってよ。あほらしい。

某氏も同様のことを言われたらしく、小心者の彼はバカにビビっている。
でも彼の仕事ぶりや実力は誰もが認めるもので、そんなアホな女の泣き言で
クビになるほどいい加減なものではない。ま、日本だったらわかんないけど、
イギリスみたいな国でさー、そんなことで辞めさせられてたら国が成り立たん。
未成年でもあるまいし。結婚の約束をしていたわけでもなし。

同じく、私も自分の仕事はきっちり以上にしているし、
何も咎め立てされるようなことはない。

「そんなことをしても自分があとで辛くなるだけだよ」
と言ってはみたが、このアホ女は聞いちゃいない。

もう呆れちゃってヘソが茶を沸かす勢いである。
ハラが痛くて、再手術になったらどうしようとか人が心細い気分でいるときに、
そんな、もう話してもどうにもならんことをクドクド訴えることもないんじゃないかと思う。

ああ、嫌な気分だ。
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# by masala_days | 2005-05-17 00:25 | イギリス話

イギリス人の事務処理能力

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[Zanzibar Tanzania, 2002]

月日の経つのは早いもので、すでに5年も前のことになるが、あまりに短かった会社員時代、わたしはつくづく、自分はなんて事務処理能力に欠けたダメ社員なんだろう、と思っていた。

お客様に送る書類一式、規定の同じものを20通用意する、なんて単純作業に数時間かかるうえ、間違いなくすべて揃えられたことは数えるほどしかない。

たいてい、あの書類が一枚だけ足りないとか、住所を印刷してないとかいう封筒が2つ3つあった。ほんと、自分の無能さを呪ったもんである。

現在、図書館の仕事では、来訪者の応対とともに、蔵書(たって大したことないが)の整理、教材のコピー、印刷物の作成などを行っている。

で、つくづく思う。イギリス人、この無能なわたしよりさらに無能である。
でもって全然それを恥じることがない。驚異の心臓だ。

たとえば新規の生徒さんに渡す書類一式をつくるとする。
学校案内、周辺のマップ数種類、地下鉄案内図などをひとつの
クリアファイルに入れる、というそれだけのことだ。
いくらダメダメなわたしでも、ひとりで15分もあればできる。
それをイギリス人スタッフがやると、3人がかりで1時間ですよ。
なぜそうなるのか? それは絶え間なくおしゃべりをしながら作業するからであり、
おまけに途中で別の仕事を闖入させて作業を中断するからであり、
もうなんというか、「おいおいおいおいおいおい」という感じだ。

そういうことを見逃すから、本当に能力ある人、たとえばシティかなんかを
バーバリーのコート着て闊歩しているような人々(すごい偏ったエリート像だ)と、
そうでない単純労働・肉体労働の人々とのあいだに、あまりに極端な知的・
金銭的・社会的格差が生まれてしまうのだ! となぜか鼻息荒くわたしは思うわけです。

アメリカを褒めるのはなんかシャクだけど、やっぱアメリカのいいところは、
「がんばってやろうぜ! がんばればがんばっただけ成果があるんだぜ!」
という向上心が素直に認められるって点に尽きる。イギリスにはこの「向上心」が
なさすぎる(あるいはカッコ悪いと思う)人間が多すぎる! 「やったってどうせムダ」
モードの人々に何を期待すればよいというのでしょう!

去年私の担任だったレイチェルは図書館仕事の責任者でもある。
彼女はイギリス人にしては勤勉で向上心もあって、てきぱきした
「デキる」人なのだが、昨日、一緒にケンブリッジ検定の教材のコピーを
作成していて、やっぱり「おいおいおいおいおい」と思ったことがあった。

ラベルとかね、まっすぐに貼らないし、そもそもきっちり長方形にカットすべき、
わたしなら定規できっちり線をひいてカッターナイフで慎重にいくところを、
いきなり鋏をいれてジョキジョキ適当に切っていくのよ。これがまたアナタ……。
できあがったファイル、歪んでるし、セロテープの端がピロンッてな感じではみ出てるし、
なんかもうヘナチョコ極まりないというのに、レイチェルひとこと、
「Brilliant!(すばらしいわ)」って、ああそんなマバユイ笑顔をわたしに向けてくれるな。

密かにため息をつくわたしを尻目に、彼女、ふわふわカールした金髪を
なびかせて颯爽と去っていきましたとさ。
でも、なんか愛嬌あるというか、憎めないんだよなー。

「勤労は美徳」の国に生まれ育ってよかったのか悪かったのか、
いまいち分からない今日この頃。
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# by masala_days | 2005-05-13 22:38 | イギリス話

人生は笑ってばかりじゃないのよ*第1週

「男は強い女が好き。でもそれも35歳まで。それ以降はただの可愛げのない女とみなされる」
「じゃあ彼女は、あなたが人生でつきあったことがある唯一のインド人女性だっていうの?」

インド系イギリス人作家Meera Syal原作・脚本の "Life Isn't All Ha Ha Hee Hee" が
ついに昨日、BBCのドラマでスタート。近頃インド系英語作家の作品に注目しているわたくし、
どうしても見逃せない番組だった。

だいたいにおいて当日中には絶対に終わらないうちの先生の山のような課題を
鬼のような気合いで終わらせ、きっちりテレビっ子となった。
(が、手元には3週間ほど前に買ってずっと裾上げしてなかったパンツを用意。
こんなテレビ鑑賞の機会でもないと一生履ける日が来ない……)

物語は3人のインド系イギリス女性を中心に進んでいく。

テレビ番組制作会社でバリバリ働く才女Tanya、早くに結婚してふたりの子供を
もうけたものの心理カウンセラーの夫との微妙なズレに悩む中年妻Sunita、
伝統的なインド女性&貞節な妻を貫こうとするShaila。
それぞれ違うキャラと立場にいるものの、3人は仲のよい友人同士だった。
ShailaがTanyaの元恋人と伝統的インド式結婚式を挙げて家庭の主婦に
おさまるまでは……。

しょっぱなからググググッ~っとひきつけられるドラマでした。
イギリスにおけるインド系マイノリティの、イギリス化とインド人的アイデンティティの苦悩、
みたいな普遍テーマを押し付けがましくなく描いていて、ひじょうに面白い。

なんたって脚本がうまい! 原作を書いたMeera Syalは脚本も書いて、おまけに
Tanya役も演じてしまうものすごいマルチぶり。

冒頭の最初の台詞(いい加減な記憶によりますが)は、Laila Rouass演じるTanyaの
モノローグ。彼女は意識的に自分をイギリス化しようとしていて、バンバン言いたいこと
を言うし、色恋沙汰にも強気。まさに西洋的な、強くてセクシーで怖いものなしの美女で、
自分の元恋人を親友に紹介して結婚までさせてしまった……のだけど、キャリアと
アイデンティティと自分の弱さに気づき始める、ちょっと迷えるお年頃。

このLaila Rouass、以前も見たことがあると思っていたら、以前東京国際映画祭で
上演された"Split Wide Open"に敏腕テレビプロデューサー(だったかな)役で
出演していたのだった。この映画も好きな映画だったな、そういえば。

で、3人のなかで一番インドっぽい純粋で貞節な妻Shailaを演じているのが
Ayesha Dharker。この子も見たことあると思ったらインドのテロリストを描いた
映画「マッリの種」の主人公を演じていた女優さんで、おまけに前述の"Split Wide Open"
にも少女偏愛オヤジの秀才娘役で出ていた。しかもスターウォーズ最新作にも出てる
じゃないか。をを。「マッリの種」の時は田舎臭い感じで、でもアップ多用に耐える印象的な
目をしていた。今回のドラマでは痩せてググッと大人っぽくなって(ちょっとギョロ目&
大口気味ではある)、正統派インド訛りのイギリス英語を駆使していて、
これまた魅力的。

ドラマの中では彼女は自分の夫が親友と関係があったことを知らない。
で、Tanyaが制作する番組のインタビューで、Shailaの夫が妻を褒めたときに
Tanyaが言うのが二番目の台詞。Tanyaもれっきとしたインド系で、ふたりは
恋人同士だったにも関わらず、元恋人は「妻が初めてのインド女性」と言い切る。
つまり、Tanyaのことは「インド人ではない」と断言している、という微妙につらい
台詞なわけです。

単純な私は、こういうドラマを見るとすぐに自分とか身近な人と比べる癖がある。

小さい頃ブラジルで過ごしてその後居心地の悪いまま日本的学校教育を終えて、
その反動で海外ほっつき歩き生活に突入してきた私にとって、
この「自分は何人であるべきか」問題はけっこういつまでも付きまとう重要課題だったりする。
「日本的な日本人でありたいのだけど、それを通そうとすると今自分がいる社会では
受け入れられない。かといって日本に帰っても標準的日本人とはとてもいえない」って
やつ(笑)。その点、南アフリカからの移民であるうちの先生は、Tanyaと同じように
完全に自分をイギリス化することでそれなりの安定を得ている。先生の場合、
それは少々むりやりなやり方で、時々ちょっと痛々しいな、と思うこともあるんだけど。

まあそんなこんなで、このドラマ、ああ面白いなっと。
と勝手に盛り上がっているわたしです。
そのうちちょっと時間を見つけて原作を読もうっと。

今読んでいるのはRohinton Mistryの "A Perfect Balance"。70年代のボンベイを
舞台にパースィー(拝火教徒)の家庭事情? など複数の登場人物を描いた作品で、
とてもとても興味深いのだが、全部じゃないものの、込み入った描写になってくると
耳慣れない単語続出で、なかなかすらすらとは読み進めない。そのぶん味わい深いというか、
面白い。匂いまで嗅げそうな風景描写が秀逸だと思う。
が、うーん、現状ではお風呂の15分だけしか読む時間がないんだよなあ。
つらい。本くらい自由に読みたい(泣)。
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# by masala_days | 2005-05-11 23:17 | Life Isn't All Ha Ha

わたしの弱点

ふたつ以上のことを一度にできない。
テレビみながら料理して友達と電話で話す、くらいのこともできない。
いはんや複数の仕事をや。
「仕事を断る」つうのは、なんだ、エラそうな感じで、いやなものです。
でも、できないものはできない。

ダメダメだなあー。
ちかごろ苛々しがちで、反省することしかりだけどやっぱり
苛々を止められん。困った。

と、そんなところへ、
バンクーバーより友人のスナフキン(↓のどこかで書いたカナダ人)から
誕生日おめでとうメールがはいる。アホな私は、それだけでもうウキウキである。
遅れてごめん、なんて言わなくていいのに~。
ちなみに奴の誕生日は私のからちょうど2ヶ月後の7月3日で、同じ1974年生まれ。
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# by masala_days | 2005-05-10 22:15 | イギリス話

退屈しない人生

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[New Delhi, India 2001]
Children looking into a picture box

最近とみに思うのだが、どうも私は退屈というものを滅多にしないらしい。いつも何か「やらねば」という項目があって、頭がすううっとゼロになることがないのだ。南の島にいても、ロンドンの繁華街にいても、どちらも同じ。

無意識に自分に何か課しているような感じがして、心からくつろげない。それと同時に、心の底から「ああ退屈だなあ。つまんないなあ」と思うこともない。たとえば電車が急に3時間止まって本も新聞も音楽もなくても、私は退屈せずに何か考えていると思う。あ、紙とペンがあるといいですねえ。

だから私の周りにいる人たちが手持ち無沙汰にしているときに、こちらは頭が一杯手一杯でろくに応対できないと、なんか「悪いなあ」とすごく思う。あまつさえ、自分が忙しいふりをしているだけの能率の悪い人みたいに思えてくる。

神様、必要としている人間には3時間くらい余分に一日を延長してくれませんかね。
ここ数週間、授業、図書館ワーク、原稿書き、試験勉強、恋し君と逢引き、のトリプルだかなんだかタッグで、一日一日が、ゆっくりものを考える間もなく、ほっと一息つくまもなく、あっという間に過ぎていく。退屈できるものならしてみたい。

やりたいこととやらなければいけないことを全うするのは事実上不可能な今日この頃。人生には優先順位というものが必要だなあ、とつくづく痛感しつつ、リストを作成してみたりもするのですが、なんか予定通りいったためしがないよ。とほほ。

つまり言いたいことはだ、私、ぼけっとしているように見えても、脳みそは動いてるんですよ。うん。

イギリスは本日、選挙の投票日。
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# by masala_days | 2005-05-05 21:49 | 旅なんちゃって

憲法記念日31歳になった。

年齢と中身が連動しないのがなんとも居心地悪し。

誕生日の贈り物。
あとに残らないものが欲しい。
思い出なんて時間が過ぎたらただのくそみたいなもの。
だから思い出にならないものが欲しい。
何もしないでいいよ。そっとしておいてよ。
などとうそぶいてみた31歳の誕生日。

ぜんぜん期待してないところにあったかいお祝いをしてもらった。
手描きの、ちょっと皮肉テイストの、でも心のこもったカードとともに。
うれしくてちょっと泣いてしまった。やだなあ、年増の乙女風涙って。
と、思いながら、一度泣き出すと止まらない困った体質なのだ。

わたしが大ファンであるところのその人のオリジナルの絵を、どれでも好きなものを
プレゼントにくれるという。宝箱のような、山のようなファイルの中から、
どうしても1枚だけを選ぶことができず、ずうずうしくも6枚! やっとのことで選ぶ。
さすがにオリジナル作品を何点もぶんどるのは気が引けるので、原本を借りて
カラーコピーして、きれいにフレームに入れて、組作品に仕立てるつもり。

「僕にとっては自分の作品はたまりにたまっていた排泄物(shit と言っていましたがぁ)の
ようなもので、やむにやまれず出てきてしまったものだ。だから、それを大事に
壁に飾る人の気が知れない」
なんて言っていた。ふふふ、あんたのくそ、嬉々として飾ってしまうよ私。

ちなみにカードには、膝を抱えて、いじけながら31まで順番に数を数えている
怪獣が描かれていました。
「これは私なのか?」と聞いても、ふぇふぇふぇ、と笑うだけで、教えてくれない。
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# by masala_days | 2005-05-04 21:12 | 旅なんちゃって

幸せといえば幸せ

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[Old Delhi, INDIA 2000]

うーーーー、激しくインド郷愁の念にかられている。
この「インドに行きたい病」、数ヶ月に一度おきる。
一方、インドにいるときは、数ヶ月に一度必ず「インド嫌い病」を患う。

いろいろな人に聞かれるけど、
「ええ、インド好きなんですよ」とは、とても言えない。
愛憎こもごもで、中間がない。
はぁー、でも今は愛のほうが強いな、イギリス嫌い病への万能薬として。

でも、「勉強だけしていればいい」状況になったのって、考えてみたらずいぶん久しぶりだ。
考えてみればそれはとってもラッキーなこと。うう、がんばらねば。

そうそう、最近はまった言葉。

◎「白馬の王子様」 Prince Charming
もともとはシンデレラが結婚する相手の王子様の名前らしいんですが、
転じて、女性にとっての理想の男性を指すようになったようです。

I'm still waiting for my Prince Charming.
と、意味ありげに妖しく微笑みながら意中の男性に言ってみたりします(ホントか?)。
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# by masala_days | 2005-04-29 21:58 | イギリス話

鬼のように忙しい

6月に試験が迫ってきて、焦ってきました。
どうしてこう、CPEは難しいんでしょう。
やればやるほど自信をなくして、絶対に合格しない気がしてくる。

このCPE(Cambridge Proficiency Examination、日本だと「ケンブリッジ英検特級」
とかいうらしい)というやつ、これはもう語学力とかじゃなくて、頭の良し悪しをはかる試験と
いっても差し支えなく、圧倒的にアホウなわたしにはとてもきつい。英語能力プラス論理的
思考能力を見るというか。

ああああああ。

[後日の訂正 5月6日土曜日]
CPEは「Certificate of Proficiency in English」の略でした。
とんだ間違いだ。へへへ~、と笑ってごまかしてみる。
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# by masala_days | 2005-04-29 01:09 | イギリス話

役立つ言葉トップ5

授業中、「一言も言葉が分からない国に旅行する場合、もっとも役に立つ5つのフレーズは
何か」という話題になった。

べらべらのべつまくなしに話すスウェーデン人やらドイツ人に囲まれて
普段は静かなわたしですが、こういう話題はまあ、得意ですわ。経歴柄。

1)こんにちは/さようなら
2)ありがとう
3)いくらですか
4)トイレはどこですか
5)1~10までの数字

これが私のマスト5。これだけなら数ヶ国語いける(笑)。
トップ10まで挙げるとなると、ちょっと選択難しいかもしれない。

あ、そうだ、最近あった好きな会話。

うちの先生が図書館から私に無断で本を持ち出したので、文句を言いにスタッフ・ルームへ。
「僕は教師だぞー。かわいい生徒のためにこの本が必要だから借りたんだぞー」
「でもちゃんと手続きしてください。急になくなったら困るんですってば」
「そんな面倒なこといちいちやってられるかー」
「でも図書館の本はみんなのものですから、規則は守ってもらわないと」
「じゃあ今度からきみにお茶代渡すからさー、なんとかしてよー」
そこへ去年私の担任だったレイチェル登場。
「ちょっとレイチェル聞いてよ! うちの先生、私に賄賂をわたすとか言うですよ!」

はい、この「賄賂をわたす」。
「grease one's palm」と言う表現があります。
誰かの手のひらに油をなすりつけて潤滑にする、というような意味。
この表現、インドにいるときに知ってたら連発して使ってたのに。
……と思ったが、インドには「バクシーシ」(もともとは「喜捨」という意味だが「賄賂」の意味で
使われることが多い)つう言葉があったんだった。
何はともあれ、この会話で一気にインドのさまざまな匂いが蘇って里心がついて
しまったひめぽんです。

ところでわたし、お酒をほとんど飲めないので今まで知らなかったのだが、
ワインを飲むと瞳の色が変わることに気づいた。
もともととっても薄い茶色なのが、薄く緑がかった色になる。
最初は照明の加減でそう見えるのかと思っていたのだけど、
何回かワインを飲んだあとに違う条件下で確認した結果、いつもそうなる。
こういうことって誰にでもあるのかなあ。謎。
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# by masala_days | 2005-04-25 21:58 | 英会話あれこれ

Magic Words

Excuse me.
Thank you.
Please.

このみっつ、イギリスでは絶対に忘れてはなりません。
英語を話さない人でもこのみっつの言葉は絶対に知っているはずなのだが、
どうも実際の場面では使えないことが多い。

日本からお客さんが来てロンドンを一緒に歩いた時、
その人はそこそこ話せるのに、カフェやレストランでものを
頼むときに「ぷりーず」が言えない。

学校の図書館に来る生徒さんたちの英語レベル、まあ、
初級から上級まで色々います。
だけど、このみっつをきちんと言える人が、ほんとうにいない。
両家の子女と思われる少年少女も、このみっつが出てこない。

アメリカなんかだとそうでもないのかもしれないけど、
イギリスではこのみっつは「マジック・ワード」と言って、
どんな粗相をしようとも、どんな言葉使いをしようとも、
それがつくだけで丁寧になるまさに言葉通り魔法の言葉なのであります。

って別に私もイギリスに来るまでそんなに意識したことはなかったのだけど、
ちょっとイギリスにかぶれてきてるみたい。

何かものを頼まれたとき、「ぷりーず」がつかないと、また、
バスで人の足をまたいで行く人が、「えくすきゅーず・みー」と
言ってくれないと、「この人は英語が母語ではないのだ」と分かっていても、
特に機嫌の悪いときなどはものすごくムカっとしてしまう。

カフェでコーヒーを頼むとき、「Coffee」だけ言うのと、
「Coffee, please」というのと、たった一語がつくかつかないかで、
対応がずいぶん違うと思います。そんな難しいことじゃないのに、
印象がガラっと変わる。

まあ逆に、世界中あちこちでこのみっつの言葉を連発する人種を
見かけたら、それはかなりの確率でイギリス人だってことですね(笑)。
ちょっと連発して言いすぎかなって思うこともあります、はい。
アメリカ人あたりに笑われてたりして。
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# by masala_days | 2005-04-19 21:46 | イギリス話

映画「Sideways」を見た。

久しぶりに映画館に行きました。
たぶん私は映画そのものよりも、
映画館というものが好きなんですね。

ビデオとかDVDとか、まあいいけどさー、
あの独特の匂いとか、座席の具合とか、
ポップコーンの匂いとか、そういうものが。

で、先日「Sideways」という映画を見ました。
小説家志望の冴えない中年の英語教師(バツイチ)が、
結婚を控えた友人とワイナリー巡りの旅に出る、というお話。

壮大なスケールの大作ではなくて、
ちんまりとした作品なのだけど、
すべてのディティールに大なり小なりの「真物」が
描かれていて、見ごたえがありました。

主人公がいい。ばつぐんの「イマイチさ」を発揮している。
奥さんに逃げられ、小説は売れず、かつての二枚目俳優である
友人の不埒な行動に振り回され、打ちのめされ、ワインをあおり……。

学校のクラスメイト(スウェーデン人2人、スイス人2人)と、うちの
先生と行ったのですが、先生ってば、ちゃっかりワインを一本持参して、
みんなで紙コップに隠して飲みながら映画鑑賞してました。
我々の周りだけ、ものすごいワインの匂いが漂っていて、私は他のお客さんに
バレやしないかと、ひとりでドキドキしていた。
いいのかなあー。まあいいんでしょう。

まったく予備知識なく見る映画が、予想をはるかに上回ってよかったのって、
なんか得した気になります。

と、思っていたら、なんだーこの映画、アカデミー賞の脚本部門か何かに
選ばれているではないか。さもありなん。

もっとも好きな映画のうちのひとつです。
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# by masala_days | 2005-04-14 21:25 | 旅なんちゃって

新しい日々

ええ、ロンドンは珍しく朝から快晴です。
いいねえ晴れの天気は。
イギリスに来たばかりの頃、イギリス人って本当に天気の話ばかり
するのだなあと思っていたのだけど、半年以上経った今、
イギリス人並みにお天気に気分を左右されている自分に気づいた。

今日から午前は授業、午後は学校の図書館で働きます。
図書館、いいですね。子供のころから好き。
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# by masala_days | 2005-04-11 17:27 | イギリス話

生活形態が変わる

突然ですが(とまたここから始まる)、明日引越しをしますです。

いやあ、今までゾーン5という、東京で言えばたぶん吉祥寺あたりになるであろう
ロンドン郊外に住んでいたのですが、明日からは学校近くのゾーン2、中心部までも
さくさく行ける便利な場所です。

引越しは何度もしたけど、しかし、ロンドンの家賃は本当に目が飛び出るくらい高い。
インドでひとりで住んでいた広~いフラット、8000円くらいだったというのに。

先月から身辺がバタバタし続けていて、ちっとも落ち着かなかったのですが、
これでしばらくしたら落ち着くことでしょう(落ち着くことを祈るのみ……)。

しかしここ一ヶ月、しんどくて7キロも痩せてしまった。
というかまあ、ダイエットもしていたので、心労のみで痩せたわけではないのですが、
痩せたとたんにいっぱい男の子に声をかけられるようになり、
やっぱり見た目は大事だと実感しつつある今日この頃。

このままオバちゃんにはなるまい。
と堅く心に誓いました。
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# by masala_days | 2005-04-09 00:49 | イギリス話

生Robert Plant

以前、ここで「Robert Plant、あんなにかっこよかったのにただのおじさんになっちゃて
がっかり」と書いたの、激しく訂正しようと思います。

突然ですが(最近これ多いなあ)、昨日、Royal Albert Hallで行われたRobert Plantの
ライブに行ってきました。

7時半開始というので遅刻しそうになりながら汗だくで着いたら前座が2時間……。
一日みっちり動き回ったあとでヘロヘロ状態、頃は9時半、もう帰ろうかなあと思った頃、
ようやく真打ち登場です。

Led Zeppelinが活動していた頃、私は思い切り生まれていなかったかほんの
子供だったので、本物のRobert Plantを見るのは初めてでした。出てきた瞬間、
あたりの空気が変わったというか、一番上のサークル席までオーラが届きました。

もう、モノカキ根性放棄します。
「すごい」としか書けない。
天才っているんだなあ、と心から思った。

いったいどこから出ているんだろうという、あの声、あのシャウト。
レコードで聴くのの100万倍、力がみなぎっていた。
彼独特のあの高音のシャウトも絶対に外さない。いきなりパシーン、
という感じで脳天にヒットする。低音からぐぐぐぐっと高音まですごい勢いであがって行く、
ジェットコースターのようなシャウトには鳥肌が立った。

かっこ悪い歳のとり方したなんていって本当にごめんなさい。
35年前の映像と同じように、素晴らしくセクシーで、素晴らしくかっこよかった。

Robert Plantのアイディアだと思うのだけど、ステージ前方でお香を焚いていて、
それが上の私の席まで漂ってきていい感じ。ちなみにステージ向かって右手の
一番上のサークル席、上方からではあるけど意外によく見えました。
18.5ポンド(3600円くらい?)はとてもお買い得だった。
日本だとライブとかコンサート、高すぎて行けないんだもん。

ところで、回りを見渡せば、ロンドンのどこにこんなに生息していたのだと訝しくなるほど
大量の、現役は退いたけど昔ヒッピーでした風情の不良中高年男性でいっぱい。
前の席にいた数人なんか、思い切り巻き巻き煙草のパッケージをやりとりしていて、
変わりばんこにトイレに消えるんだなこれがまた。キメに行ってたとしか思えない(笑)。

大盛り上がりのラスト。アリーナ席にいた白髪の紳士がいきなりステージ近くに躍り出て
ぶいぶい踊り始めたと思ったら、近くにいた微妙に長髪を残した中高年たちが俺も俺もと
前に出て、Robert Plantから距離にして1メートルくらいのところで踊り狂い始めた。

「すごい、おっさんを狂わせる魔力だ」と思っていたら、最初のおじさん、突然冷静になって
携帯で超至近距離のRobert Plantの動画を撮り始め、また何事もなかったかのように
踊り狂いだしたのがひじょうにおかしかった。

なんにしろ、Robert Plantはすごい。
いいもの見せてもらいました。うん、ライブはいいねえ。
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# by masala_days | 2005-04-05 23:00 | イギリス話

突然ですが、よろめきドラマ Vol.1

妖しく光る赤い照明と、軽快なサルサのリズムに美代子は酔っていた。
ダンスホールでは100人ほどの男女が入り乱れて大音響に身を任せている。

こうやって激しく回されるの、ちょっと、いいわ。

と美代子は思った。

ジョージは時々、不敵な笑みを浮べながら美代子の身体を抱きすくめ、
頭の芯が痺れるほど何回転もしてターンを決めるのだ。
「何があっても基本のステップを死守するんだよ。いいね」
レッスンが終わって自由時間になった時、ジョージは美代子の耳元でそう囁いたのだった。それから美代子は、どんなに激しい動きの時も、頭の中でサルサの基本リズムである7拍を数えている。

One two three four, five six seven,
One two three four, five six seven,
One two three four, five six seven,

ロンドンに暮らし、毎日、嫌というほど英語に囲まれて過ごす美代子も、
数を数える時はいつも日本語になってしまう。けれど踊っている時は
きちんと英語のカウントが頭に浮かぶのが不思議だった。

彼女の手をとるジョージは、身のこなしひとつひとつに自信が満ち溢れていた。
足元のおぼつかない美代子を上手にリードし、初心者クラスではまだ
習ってもいないステップを強引に踏ませてしまう。

腕を引かれ、背中を押され、ただ彼の指示するままに動き回っているだけなのに、
美代子はいつのまにか、絶対に不可能だと思っていたスピンやターンをこなしている自分に気がついた。

曲が変わると時おり、ジョージは気まぐれに近くにいる別の女性と踊り出す。
美代子も誘われるままに別の男性とパートナーを組む。
すると今度は情けないくらいまったく踊れない。

ジョージじゃないと、駄目みたい。

美代子は相手の男性に申し訳なく思いながら、まごまごと不恰好にフロアを動き回った。横目でちらりとジョージを盗み見る。如才なく長身の美しい黒人女性をリードするジョージには、いつものおどおどした様子は微塵もない。抑えた動きに余裕すら漂っている。

ただの汗かきで冴えない青年だと思っていたのに、踊っている時の彼はうっとりするほど格好よく見えた。職場での彼とは別人のようだ。サルサを始めてからもう5年経つというから、フロアに立つのは今日が30年間の人生で2度目という美代子とはえらい違いだった。

職場での顔。踊っている時の顔。
ジョージっていろんな顔を持っているんだわ。
彼の、もっと別の顔も見てみたい。

そう思いながら美代子は、家ですでに床についているはずの夫の顔を思い浮かべた。
善良な彼には表裏がなく、その時々の気分がそのまま顔に出る。
男に身体を触られながら踊り陶然としていることを知ったら、顔を真っ赤にして
怒ることだろう。日本人の友人と食事をすると嘘をついて夜遅くに出歩いている自分が、とてつもなく悪い女に思えた。

ジョージは一時期、新入社員の女の子と噂になったことがあったものの、
うまくいかなかったと人づてに聞いていた。
ふとしたきっかけで彼がサルサのことを口にした時、美代子はほとんど反射的に、
「私、習ってみたい」と言っていた。日常に埋もれまいと必死でもがいていた美代子の、ほとんど叫びに近い訴えに、ジョージは驚いて目を見開いた。

それからである、毎週日曜日のこの密会が始まったのは。
といってもまだ二度目なのだが、美代子はすっかり本気で今後もレッスンを続ける気になっている。

サルサが好きなのか、ジョージが好きなのか。
……両方とも堪えがたく好きなのだった。
一度入ってしまったスイッチは、そう簡単にはオフにできない。
もっとうまくなりたい。もっとジョージのことを知りたい。

「なんとか生き延びたじゃないか。うまいもんだ」
「だってあなたが強引なんだもの」
「でも他の女性には、あんな無理矢理にリードしないよ」
「私があんまり下手くそだから、からかって遊んでるんでしょう」
「そりゃ、君に大いに気があるからね」

帰り道、鉄道駅まで美代子を送り届けると、ジョージはさらりとそう言い、
肩をすくめて地下鉄の駅の方へ去っていった。ひと気のない深夜の構内でひとり、
郊外まで行く列車を待ちながら、美代子はなかなか冷めやらぬ胸の動悸を持て余した。

長く薄暗く、寒かったロンドンの冬が終わろうとしている。
夜の空気はまだ冷たいが、底の方に春の匂いを孕んでいた。
甘く、そして危うい、小さな蕾の開きかけた香りである。

……続く……(のか?)
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# by masala_days | 2005-03-29 09:17 | 突然ですが、よろめきドラマ

サルサ初体験

Thre is nothing unexciting when you experience something new. Imagine when you kissed someone for the first time in your life. My SALSA experience was just like that.

突然ですが、サルサを始めました。
なんかものすごく燃えた。
全然ステップとか踏めないんだけど、それなりに気分は味わった。
あの、パートナーにぐるぐるに何回転もされる感じがいいわー。
これからハマりそうな予感です。

過去の栄光:わたしゃー実はかつてクラシックバレエとジャズダンスを15年ほど習っていた。受験勉強やら何やらでやめてしまったのだけど、そういえばミュージカル女優になりたかったこともあったんだった。ほとんど10数年ぶりにまともに踊ってみて、やっぱり私って踊ることが好きなんだなあ、と思いました。

まずは腹の上にのっかった贅肉をなんとかしなければ。
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# by masala_days | 2005-03-21 08:55 | イギリス話

小春日和

ほーら春先小紅♪ (古い……)。
と、思わず口ずさんでしまうほど暖かい日。朝はそうでもなかったのに、
午後になるにつれ汗ばむほどの陽気になった。
こないだまで雪が降り続いていたとは思えない本日のロンドンです。

イギリス人たちは、ここぞとばかりにこれみよがしに薄着でほくほく嬉しそうに、
「暑いわねえ」などと文句を言う。
去年、担任だったレイチェルに校内でバッタリ会うと、彼女もまた薄着。
「今のうちに暖かさを満喫しておかないと。いつまた寒くなるか分からないから」
と言っていた。朝気持ちよく晴れたのに午後はどしゃ降り、などということが
毎日普通に起きるので、彼女の言うことももっともだ。

明日の土曜日も暖かいらしい。楽しみ。
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# by masala_days | 2005-03-19 08:34 | イギリス話

いいわけ連発の日

I've been in a sort of writer's block for the last few days. I'm pretty sure what the reason is, but yet I can't deal with it. Thanks and sorry for all those who came only to find nothing newly uploaded.

その1
ごめんなさい。
コメントいただいたり、トラックバックをしていただいたりしているのを、長いこと気づいていませんでした。そうかそういうシステムだったのか、と今頃気づいています。

その2
ええーと、春です。今日は朝からひじょうに風が強くて、生暖かい空気が充満していて、まるきり春到来という感じでした。

そんなことはさておき、ここ数日、思うところがたくさんありすぎて、文章にするには頭が乱雑に散らかりすぎていて、サボってました。見に来てくれていた方々、ごめんなさい。いえね、普通に軽い近況などを書けばいいところを、ついついモノカキなもので、何か読むに値する話を書こう、と思ってしまい、なかなか書けなくなる時期みたいです、今。春なものですから。

モノカキが書けなくなる状態を、「Writer's block」というそうです。私の場合、ネタがなくて書けないんじゃなくて、色々ありすぎて整理ができず書けないだけなんですけどねー。

そういえばつい先日、友人Tさんと話していて、遠い昔の中学生時代にしていたことなどを思い出した。よくよく考えてみれば、現在に至るまで私がしていることと、13歳だった私がしていたことと、呆れるくらい全く変わっておらず。

人間の本質なんてそうそう簡単には変わらないのだなあ、としみじみ思った次第。
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# by masala_days | 2005-03-17 07:52 | イギリス話

インド映画にはまっていた話

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[Layered Posters on the Wall / Musoori India, 2001]
The wall of the building in the town was filled by cinema poser. No poster was peeled perfectly, it was a collage of many different posters.

3月26日にロンドンで、ZEE PREMIER というインド有数の映画雑誌が開催する映画賞の授賞式が行われるそうだ。私は毎年この賞が楽しみで楽しみで、あの手この手でテレビ鑑賞していたものだ(もうひとつ有名な賞に「Film Fair Award 」というのもある)。

駅で告知ポスターを見るまで、この授賞式がロンドンで行われていたことを知らなかった。ボリウッドの主要な俳優女優が結集する、ヒンディー映画ファンにはたまらないイベントです。ま、インド版アカデミー賞みたいなもんです。ひじょうに心動かされるものがあるのだが、ロンドンとはいえ西の外れに住む身には、会場がちょっと遠い。おまけに一緒に行ってくれる奇特な友人もいない。私はたいがいのことは「おひとりさま」でいける方だが、これはなあ、ひとりで行ってもなあ、完全に浮くだろうしなあ。

私がインド映画にはまっていたのは、98年~2000年くらいの間のことだ。
キネマ旬報社刊の「インド映画極楽玉手箱」という、今後おそらく二度と発売されることはないであろう、日本語で書かれた最初で最後のインド映画の辞典の執筆に、ほんのちょっとだけ参加したこともあった(今思えばあれに下っ端ながらライターとして参加できたのは本当にラッキーだった。楽しかったなあ)。

当時はまだ、古き良きインドの古典的観念に基づいた、まあ言ってみればベッタベタにインド臭い映画がつくられていた。最近のは変な具合で西洋の真似をしていて、どうもダメです。踊りの上手な魅力的な女優さんも極端に減ったし。

ああ、授賞式行きたいなあ。ミーハー魂をとことんまで煽られている。でも、行けないよなあ。無念。ああロンドンにいるのに~っ!

しかたないので芸能人遭遇自慢でもしよう。

去年のちょうど今頃、わたしは添乗員としてインド一周ツアーご一行様を引き連れていた。
ムンバイの空港で、搭乗ゲートに入る直前のボディチェックポイントにて。こういう場合、添乗員はまず先にチェックを抜けて、反対側でお客様たちのチェックが終わるのを見守る。だから私はグループの先頭にいた。身なりのいい、ルイ・ヴィトンのバックかなんかを持ったインド人女性の次だった。

よく見ると、その身なりのいいインド人ってば、女優のKareena Kapoor ではないか。
片手に読みかけの英語のペーパーバックなんて持ってたぞ。っていうか、彼女ってばものすごい名家出身の超サラブレット系ハイソ女優だっていうのに、なんでまた平民と同じチェックポイントに並んでいるのだ? インドってそういうとこ、お役所的というか融通がきかないというか、四角四面なのよね。

まあとにかくだ、彼女が終わったあと私は小さなブースに入ってピコピコ鳴る警棒でボディ・チェックを受けたのである。カリーナの豊満なボディに触れた同じ警棒である。をを。

よく見ると、隣の男性側の列には、Akshay Kumar、 Salman Khanまでいる。サルマンは噂通り、背が低くて、どうということはなかった。その後合流した彼女らしき女性も、けばけばしくてダメでしたねー。でも、一時期惚れ込んでいたアクシャイ。超かっこよかったです。

なんせ20人近くの大切なお客様を引率中だったので、あからさまに興奮するわけにもいかず、必死で冷静を保っていました。ああ、あれがオフだったら、どうなっていたか分からないな、私。

そんなことはどうでもいいのだ。ああ行きたいなあ、授賞式。
……興味のない人にはとことんどうでもいい話で、失礼しました。
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# by masala_days | 2005-03-09 00:15 | インド話

お仕立て天国

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[Illumination of the Papier-Mache / Shanghai China 2004]

チョコレート生姜、食べました。
ゼリー状に固められた生姜エキスをチョコレートでコーティングしたものでした。
うまいのかまずいのか、結局、判断できませんでした。
きっと、ウニとかビールとか、何回か口にしていくうちにだんだん良さが分かっていく類の食品なのだと思います(疑)。

前述のアキオくんが、レストランに設置する椅子のサンプルが出来上がってきた話を書いていました。インドで楽しいのは、この手の「オーダーもの」が比較的簡単に、申し訳なくなるような料金でできる点です。

私は服作りにはまっていました。
下手な絵を描いてデザインを仕立て屋さんに持ち込んでですね、自分のサイズに合った服を仕立ててもらうんですね。私はチビのくせに体格はいいので、既製服がぴったり合うことは滅多になくて、はじめから袖の長さが合ったシャツや裾上げしなくていいパンツなんかをオーダーできるのが楽しくてしかたありませんでした。

バナーラスで私が行きつけていた店では、シャツ一枚仕立てて80ルピー(200円くらい?)でした。職人さんの手間賃より生地代の方が高いんだもの、申し訳なくなるよなあ。

でも職人さん、時々とんでもないものをこしらえてくれて笑わせてくれたもんです。
頭が入らないブラウスとか、右と左でデザインの違う袖とか。

私が存じ上げる、とあるインドの専門家が、
「インド人は、命令する側と命令される側にはっきり分かれる」
ということをおっしゃっていました。

私は仕立て屋さんでこの言葉をよく実感していました。

そこでは私が(言葉に若干の語弊があるかもしれないけど)命令する側ですから、職人さんはただもうひたすら、たとえそれが素人のいい加減なサジェスチョンであっても、私の言うことにひたすら従うわけです。だから時々、変な形になったり、着てみると動作に無理が出たり、服として機能しない「作品」ができたものです。

たとえば本当に熟練したベテランさんだったら、ここにスリットを入れないと変な形になるとか、この裁断には無理があるとか、彼なりの提案をしてくれます。が、数ヶ月の間に、何のコネもなく「これだ!」と信頼できる職人さんを見つけることはついにできませんでした。裕福なインド人はたいがい、代々続く、家族の衣服一切合財を受け持つお抱え仕立て屋さんを持っているそうです。

「なんでも思い通りにできる」というのは、一見便利で都合がよく思えるのですが、結局は何もかも自分の判断でやらねばならず、完成したものがちんちくりんでも文句を言う相手もおらず、ずいぶんと疲れることだなあ、とよく思いました。

大人になるのがツライのと一緒よね。
二十歳くらいで見合いで結婚しときゃよかったと、時々、思う。
(本日、支離滅裂気味なのは月曜日だからです。もう頭がわやになる忙しさ)。
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# by masala_days | 2005-03-07 22:47 | インド話

Saturday Special

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[Plain Dal / Aaloo Matar with Paneer / Aubergine Coconut Masala / Chapati Bread / Ghee Rice]
プレーン・ダル、ジャガイモとグリーンピースとパニールのドライカレー、茄子のココナッツマサラ、チャパティ、ギーライス



うっ。なにげに先週と同じメニューだ。手抜きじゃないのよっ。
本日、同居人母が来ていたのだ。
イギリスでは明日が母の日なので、同居人が彼女を招待したのだった。
外したくないので同居人にメニューの提案を尋ねると、「先週のココナッツ風味の茄子とパニールでいいんじゃない」との答え。そりゃあなたが好きなメニューだってば。

日本のある一定以上の世代の人々も、未知の食べ物に対して警戒心が強いと思う。
それはイギリス人も同じ。個人的な印象では、庶民クラスになればなるほど食に伝統的に興味がなく頑なで、いつも同じようなものを好んで食べる気がする。ある程度の教養があり、外の世界に興味を持ったミドルクラス以上の人々の方が、多少の勘違いをしつつも積極的に新しい料理を受け入れている。

同居人母は私が料理する場面に出くわすたびに、隕石とか新種の虫でも見るような顔をして鍋を覗き込んだりしていた。だから当然、これまで私の料理を食べていただいたことはない。

一応、イギリス式に野菜は柔らかめ(でも歯ごたえは譲れないので残した)、辛さ控えめ(どのみち同居人も辛いのが苦手なのでいつもマイルドだ)、ナイフとフォークで(インドではスプーンとフォーク)出してみた。気分はすっかりオープンしたてのレストランの料理人である。

私は残りのチャパティを焼くのに忙しい。とりあえず同居人に彼女のお供を押し付けた。
「これは何、え、チーズなの? この葉っぱは?」
「毒を盛ってるわけじゃないんだからさー、早く食べなよ」
「レストランに来たみたいねー」
「今日は主に南インドのレシピでね、ほらこの葉っぱ、カレーリーフって言う南独特のスパイスで、あとこの茶色いのはクミンシード、胃腸の働きを整えるんだよ。ライスはギーというインドのバターを使っていてね。いい香りでしょう」

……同居人、私がいつも言うことをそっくりそのまま得意気に説明している。
聞いてないようでちゃんと聞いてたのね。
ま、その私からして渡辺玲さんの本から得た知識を彼にそっくりそのまま得意気に説明しているのである。
まるで伝言ゲームだ。あはは。

料理はひとまず気に入っていただけたようでホッと一息。

「週に一度でもこうやってちゃんとしたものを食べるって大事よねー」
この発言はどうやら、数日前に放映された、「裸のシェフ」ジェイミー・オリバーくんが出ているテレビ番組に影響された模様(彼女はこれまた典型的イギリス人としてテレビをこよなく愛している)。

この番組はちょうど友人Tさんも見ていて、金曜日に彼女に会った時に、イギリス庶民の食生活の想像を絶する実態を語ってくれていたのだった。

ジェイミーくんが小学校を訪れて子供たちに好きな食べ物を聞く。「チップス(ただの揚げたジャガイモです)」、「ポット・スナック(カップ麺のようなもの)」などなど、ものすごいジャンクフードの羅列になった。彼らの食生活を改善するため、ジェイミーくんがお母さんたちに「健康メニュー」用の買い物リストを手渡す。ところがお母さんたち、そもそも野菜の名前をよく知らず、「ねえこれ何?」と首を傾げてしまう……。

私はかねがね、同居人の食生活はジャンクフードで成り立っているのだなあ、と思っていたのだけど、どうもそれはかなりマシな方だったらしい。たとえ出来合いのものでも冷凍食品でも、いちおうは身体のことを考えている。パンは胚芽入りの茶色いやつだし、バターは使わずマーガリンで代用してるし、塩分控えめだし、脂っこいものは避けているし。あやしいながらもバランスのとれた「食事」らしき体裁を整えていた。

彼はほとんど毎日同じ「缶詰ビーンズと冷凍ベジ・ソーセージと即席マッシュポテト」という食事でも幸せそうに生きている。その彼が、
「まったくさあ、あれだけジャンクフードばかり食べてたらおかしくなるよねー」
などと口を極めてジェイミーくんの番組に出ていたお母さんたちをののしったのは、なんだかすごくおかしかった。

「缶詰ビーンズと冷凍ベジ・ソーセージと即席マッシュポテト」。
これって日本人の「納豆卵と白いごはん&お味噌汁」みたいなものなのかもしれない。
だとしたらあんまり同居人ばかりを笑ってもいられないなあ。わたし、このメニュー毎日続いてもちっとも困らないからさ(笑)。

しかして同居人の母の日のプレゼント。「Chocolate Ginger」なるもの。
チョコレートの真ん中に生姜がゴロンと入っているらしい。
「おいしいのよ。ふたつ、あなたにあげるわ」
と同居人母は素晴らしく寛容に微笑み、私にチョコレート生姜を分けてくれた。

その後、数時間に渡って、試食しようかどうしようか激しく迷っている。
うーん。チョコレートに生姜。生姜とチョコレート。そう来たか。

……やっぱりイギリス人の味覚センスは分からない。
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# by masala_days | 2005-03-06 07:01 | イギリス話

浪漫放棄時代

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[Buffaloes' Bathing in the River Ganges / Banaras India, 2001]


ついに携帯電話もつぶれてしまった。

数年前にタイで購入したモトローラのもので、前時代的というか超旧式というか、とにかくかっこ悪い携帯電話の見本のような代物で、おまけにタイ文字でメールが打てるという、自慢なんだか何だかよく分からない、全然、役に立たない機能がついたステキに胡散臭い携帯電話であった。

去年の暮れに、トイレに落とした。
あまり思い出したくないので詳細を述べることは避ける。
いちおう、ドライヤーで乾かしてみたが、ぴくりとも動かなかった。
それが数日後、まるで何事もなかったかのように生き返った。
「へんなやつだ」
そう思いながら、使い続けていた。

あれから2ヶ月超たち、どうやら今度こそお釈迦のようだ。
充電ができなくなった。電池の寿命かとも思う。が、そんな大昔の機種の電池が、タイから遠く離れたイギリスで見つかるとは思えない。まあ、新しいのを買うのが賢明というものでしょう。
しかしほんとに私の周りでものがよく壊れる。恐怖のデストロイヤーだわ私ってば。

日本にいた時、ひねくれ者の私は携帯電話を持っていなかった。
学生時代にいち早くポケットベルを入手して使いこなし(時代が反映されるよなあ)、携帯電話もみんなが持つより早く持っていた私も、いつのまにか「そんなものは、いらん」と思うようになっていた。

携帯電話が当たり前になってから、待ち合わせが下手になった。
逢いびきにロマンがなくなった。

「あ、もうすぐ着くけど、今日の店どこだっけ?」
「今どこ~? 駅に着いたら電話して」

こんな会話が、たぶん日本だけではなくて、世界中の携帯電話普及国で毎日数え切れないくらい行き交っていることだろう。

それでも私は、「何月何日何時にどこそこで」という旧来の待ち合わせが好きだ。
なじみの喫茶店でぬるいコーヒーなんかをすすりながら、待ち人を待つ。
約束の時間が過ぎたりして、「来るのかな、来るよね」なんてちょっとドキドキしながら入り口のベルが「ちりん」となるのを聞く。
「やあ、待った?」
「来ないかと思って悲しくなっちゃったよ」
「ごめん」
そういう、莫迦みたいに原始的な待ち合わせがいい。お互いの位置を連絡しあいながら、じわりじわりと接近していく携帯電話式待ち合わせは、現実的ではあるかもしれないがロマンティックじゃない。

電車に乗ると、みんな同じ顔をして、同じような角度で顔を伏せ、ひたすら携帯電話を見つめて「ちこちこちこちこ」とメールを打っている。これ、怖いです。

こまめな携帯メールなんかいらない。一日3回の携帯メールと、一年に一度の生身の誰かとの熱いキスなら、わたしゃー迷わず後者をとるよ。ってどうしてそういう例えになるかなあ……。

旅行している時、「通信事情が悪い」というのはひとつのメリットだった。
届くかどうかいまいち怪しげな葉書なんぞを、ちょっと切ない気分でしたためるのが楽しかった。

まあ、あの陸の孤島、最後の秘境ラダックですら、去年訪れたら高速インターネットがつながってたからな。私を溺愛するうちのばあちゃんは、私が長い出ずっぱりの旅行をするたびに「寿命が縮む」と嘆いていたが、「携帯電話とメールのおかげでやっと夜眠れるようになった」と言っている。猫の鈴みたいなもんである。どっちかというと、今年は80歳になるのに、まだホイホイ自転車に乗ってスーパーに行くのが日課なばあちゃんの方が心配である。「せめて安定した3輪の自転車にしてよ」と再三に渡って頼んでも、「あれはどうも見た目が年寄り臭くて、かっこ悪い」とか言下に拒否するのだ、この人は。

そんな私、本日インドはバナーラスにいるアキオくんという友人とチャットなんぞをしてみた。おお、すごいぞ私。

アキオくんはもうずいぶん長いことバナーラスに住んでいる。あれ、何年だっけ? 忘れちゃった。日本語教師をしたり、会社をやったり、およそ一般的日本人男子に似つかわしくないセンスでインドに住み着いている。たまにすばらしく日本的なオヤジセンスも披露してくれる、ナイスな青年である。どういう成り行きか、彼は過去何年かの間に私が恋に落ちたほとんど全ての相手を知っているので、私はよほどのことがない限り、彼には逆らえないことになっている。弱みを握られるってツライ。

去年だったかな。彼はバナーラスにビルを丸ごと買った。住居兼商売用で、所用で再びインドを訪れていた私は、改装したてのぴかぴかで快適なおうちに数日間、居候させてもらった。当時、階下はまだぼろぼろだった。そこが今はカフェレストラン仕様に改装されて、オープン間近だという。

「インドの全人口から、ひとりたった1ルピーずつだけとったとしても、10億ルピーだぜ」
バナーラスという格好の観光地にいながら、あくまでもインド人を相手にした商売にしか興味のないアキオくんであった。

そういや、私がバナーラスにアパートを借りて長期滞在していた当時、もやしが入手できないというので、彼は豆からもやしを育てる実験なんかもしていたな。
「アキオビルが完成した暁には、地下に『もやしルーム』つくってね。で、レストランで『春のもやしフェスタ』かなんかやって、もやしのうまさを広めよう!」
そんな私の希望は、覚えていてくれてるだろうか。

自然の理。時が過ぎ、自分と周囲の環境が変わるにつれ、バナーラスの記憶がどんどん薄れていく。未来は過去よりもずっと大切だけど、嬉しいこと悲しいことキツイこと、それら全てを呑み込む「生」のエネルギー、色々な記憶のあるバナーラスと接点がなくなっていくのはちょっと寂しい。

私はアキオくんに3000ルピーの借金がある。タイかどこかに出ていた間に、家賃を立て替えてもらったのだった。それを返してしまったらバナーラスに行く口実がなくなってしまいそうで、数年経った今も返していない。

アキオくん、ごめん。今度行ったら絶対返す。


↓アキオくんのサイト
JAI通信
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# by masala_days | 2005-03-05 08:16 | 旅なんちゃって


20代の暗黒時代をインドとイギリスその他あちこち季節移動し続け、30代、やっと日本国で社会復帰。8か月の産育休を経て、現在、働くかあちゃん。オットの不在中に衝動買いしたマンションの借金返済に勤しむ


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